ボリビア・アルティプラーノ高原(標高3,800〜4,000m級)を舞台にした、7ステージ220kmのセルフサポート式ステージレース。衣食住をすべて自分で背負い、ゴール地点はあの ウユニ塩湖。日本人で完走している人がほぼいない大会という情報を聞き、「できれば入賞したい」と狙って参加した。
結果は 初日1位、最終総合3位。ステージレースに参加するようになって初めての入賞となった。レース中盤は高所と暴風と体調不良に追い詰められたが、最終日に笑顔でゴールできた1週間。
練習・準備
実は 2023年10月から2024年3月までほとんど走れていなかった。仕切り直しのために、4月から本格的にトレーニングを再開した。
- 期間:レース 4〜5ヶ月前(2024年4月)から本格再始動
- 練習として参加した大会:
- 広島湾岸トレイル
- クマン100
- 中央アルプススカイラインジャパン
- 野沢温泉トレイル
- 西湖トレイル
- 白馬国際クラシック など
- 最初は調子が上がらず、途中でやめた大会もあった
- 荷物背負っての山トレ:高尾山、塔ノ岳、鳳凰三山、焼岳ほか
- 現地適応:La Paz の空港自体が標高4,000m超。到着時点で絶賛高山病中だったので、レース開始までに順応させるのが最初のミッション
道標は「表=オレンジ/裏=黄色」の矢印で、運営から「黄色(裏面)が見えたらコースをロストしている合図」と説明された。スタッフが少なく道標が動かされている可能性もあるとのことで、迷ったら立ち止まって地図を確認するのが鉄則。
装備
ゼッケン(ナンバー)は 14。総重量は色々削って 約8kg に着地。
- バックパック:ステージレース用ザック
- ウェア:今回はあえて袖ありTシャツ。強烈な日差し対策+寒さ対策のため、肌を覆う方向に振った
- ファイテン(@phiten_official):これまでの過酷なレースもテーピングで乗り切ってきたので、今回もお世話になった
- 必携装備:寝袋(-10℃対応)、断熱マット、サバイバルシート、救急キット、ヘッドランプ×2、ナイフ、コンパス、固形燃料タブレット、水ボトル×2
寒い地域なので、ジャケットなど夜の防寒装備は削らずに残した。ここをケチると夜に動けなくなる。
食事・補給
- メイン食事:山飯ゆかさんの UL弁当(@ul_bento)。水さえあれば美味しく食べられて、ステージレースでとにかく重宝する
- 行動食:俺は摂取す を1日1個。これで夜のリカバリーまでカバー
- エネルギー粉:GU のエネルギー粉(@powersportsjp)を水に溶いて走りながら補給
- カロリーブースト枠(実験):ピザポテト。荷物に対してカロリーが取れるか試したかった
- 初日朝の燃料(荷物に換算されない):UFO 爆盛りバーレル。これだけで1,000kcal、最強の焼きそば
- ご褒美:水で戻せる ルイボスティー。水だけ飲み続けると水が飲めなくなる現象を以前のレースで経験して以来、味のある飲み物を必ず1本入れている
- リカバリー:Steady のプロテイン(@steady_jp)。甘いものが極端に減るレース中盤、ほんのり甘いプロテインが「明日の体を踏み戻す儀式」になっていた
3日目に20km過ぎから気持ち悪くなって食事が止まった。標高+暑さ+脱水のコンボだったと思う。ステージレースで食えなくなる怖さを久々に味わった。
レースレポート
スタート地点の標高は 約3,800m。アルティプラーノを北から南へ走り抜け、最終ステージで世界最大の塩湖・ウユニに着くという壮大なルーティング。
Day 1 — 33km
スタート前のバックパックは、8kgに抑えたつもりがずっしり重い。「標高4,000mで30km走るなんてほとんど経験がない」状態。
5km地点で1km6分ペース、心拍はすでに100超え。それでも前に出続けて、20km地点で塩湖の絶景が広がる。「絶景。今は順位より景色を楽しもう」と切り替えた瞬間に楽になった。
残り12kmはなんとか粘り、足を攣りながら 1位でゴール。夜はユカさんの UL弁当に味噌汁、グタクさんカレーで回復。明日もしまっていこうと思いながらテントへ。
Day 2 — 27km(誕生日)
この日は誕生日。「いい誕生日プレゼントをもらえるように」と気合を入れてスタート。
コースは終始強風。前日から熱中症気味で体が重く、無理せず脚を使う。中盤以降は暑さで全員のペースが落ちる中、粘って 2位でゴール。
ゴール後、運営から サプライズの誕生日ケーキ を用意してもらった。ボリビア式のお祝いらしく 顔からパクリと突っ込まされる という洗礼つき。「生きてきた中で一番嬉しい誕生日ケーキ」だった。
Day 3 — 33km
この日が一番きつかった。標高4,000mを超える登りで、20km過ぎから気持ち悪さが出て食事ができなくなる。「歩いてでもいいから一歩一歩進まないと意味がない」と言い聞かせて進む。
ゴール後の夜、テントが台風並みの強風に煽られ続けた。「こういう過酷な状況もステージレースの一つなんだけど、これはちょっとひどすぎる」というレベル。眠れないまま朝を迎えた。
Day 4 — 29km
前日に順位を落としていたので、巻き返しに行くステージ。「荷物も毎日軽くなって全体のペースが上がってくるはず。最初の20kmは1番手についていく」という作戦に切り替えた。
途中、山で道を間違えて崖を無理やり降る という事件もあった(後から見れば、これも全部いい思い出)。岩を飛び越える区間で着地のたびに膝が痛むのと、寒さで体が固まるのに苦しめられたが、アルパカが水を飲む牧歌的な景色に救われた。
「コーラがあったらマジで回復する」と何度も思いながら走った1日。
Day 5 — 30km
ひたすらまっすぐ走る30kmの直線ステージ。スタートからゴールが見えているという、これまで経験したことのないコース。前後の選手にペースを合わせて淡々と進めた。
このステージから先は生活パートも印象的だった。
- トイレ:地面に穴を開けたタイプ。終わったらスコップで埋める
- 水:飲料は支給、洗顔・体拭きは別の水(飲用不可)でバンダナを濡らして拭く
- リカバリー:ゴール後 Steady プロテイン。甘いものが極端に減るレース中盤、ほんのり甘いプロテインが「楽しみのストック」になる
Day 6 — 42km(マラソンステージ)
最長ステージ。山のすぐ横に張られたテントからスタートして、22km地点で「楽しい!」と言える余裕が戻ってきた。
何もない道をひたすらまっすぐ。18kmで半分、40km地点で「残り1km、頑張っていきます」とカメラに向かって声を出していた。最高の景色だった。
Day 7 — 26km(最終ステージ/ウユニ塩湖)
最終ステージ。ゴールはあの ウユニ塩湖。「楽しく走りたい」とスタート。
20kmまではめちゃくちゃ辛かったけれど、ラスト4kmで遠くにゴールが見えてきて、最後は笑顔でゴール。ゴール地点ではコーラが用意されていて、「こんなうまいコーラ初めて」と本気で思った1本。
このレースを通して、ウユニ塩湖を100km以上走ることになった。「もう一生塩湖は楽しめました」と言えるだけのスケール。
振り返り
220kmを自分で食料を背負って走り切り、初日1位、最終総合3位でフィニッシュ。ステージレース初入賞 となった。
良かった点:
- 4月からの再始動と、毎週のように出続けたトレイル大会の積み上げで、登り基調のコースに対応できた
- 装備重量を 8kg に抑えたことで初日に勝負ができた
- 「絶景に切り替える」「1番手についていく」など、ステージごとに作戦を切り替えられた
苦しんだ点:
- 3日目の食えなくなる現象。標高+暑さ+脱水のコンボ。事前に高所順化をもう少しできれば違ったかもしれない
- 3日目の暴風。テント設営場所は選べないので運次第の側面はある
- 寒暖差。日中は熱中症レベル、夜は氷点下に近い
これから挑戦する人へ:
- 道標は「表オレンジ/裏黄色」、黄色が見えたらロスト合図。地図と照らして立ち止まる癖をつけたほうがいい(実際に道を間違えて崖を降った)
- リカバリーで気持ちを上げたいなら、自分用の「ご褒美」を1日1個持っていくと精神的に効く(味のある飲み物は特におすすめ)
- 直線30kmや42kmマラソンステージは、前後の選手にペースを預けると消耗が減る
- ボリビア入りの時点で空港が標高4,000m超なので、現地に早めに入って順応する時間を取ったほうがいい
ボリビアの景色は本当に「地球じゃないみたい」だった。山道、見知らぬ街、永遠と続く真っ直ぐな道、間違えて降った崖、そしてウユニ塩湖 ── 全部いい思い出になった。
