出典:本レポートは note.com の Rena 氏(@rena_fr)執筆のマガジン「ジョージアウルトラマラソン 2022」を、著者の許諾を得て転記しています。再利用時は必ず原典 URL と著者名を併記してください。
練習・準備
Georgia Ultra Marathon って?
Racing The Planet が主催する 4 Deserts Grand Slam Plus 称号獲得に向けた 第2戦 に挑む。本来は ゴビマーチ(モンゴル) であったが、モンゴル国境が閉ざされていたため、昨年ロービングレースとして開催された ジョージア が代替レースとして再び選ばれた。

主催者・公式情報
- 主催: Racing The Planet
- 公式: The Great Caucasus | Georgia Ultra Marathon
- 装備リスト PDF: Georgia Equipment List (2022年版)
- レースディレクター:ジーナ
- Racing The Planet 創始者:マリー
スケジュール
- 集合:トビリシ
- 開催期間:2022年6月19日(日)〜6月25日(土)
- 全7ステージ、本来総距離 250km(コース短縮あり)
- Day 1: Passing through Algeti National Park / 39.5km
- Day 2: Tsalka Reservoir – from the west to the east / 45.8km
- Day 3: Ktsia-Tabatskuri Protected Area / 37.9km
- Day 4: Georgian Villages / 37.6km
- Day 5: The Long March / 73.6km(コース短縮で実走63km)
- Day 6: 休息日
- Day 7: Final Footsteps to Vardzia Caves / 9.3km
渡航ルートと入国制限(コロナ禍)
ペルーでのレース(アタカマクロッシング)終了後、そのままジョージアへ向かうルート:
- LATAM航空 でスペイン(マドリード)入り
- ターキッシュエアラインズ でイスタンブール経由
- 集合場所の トビリシ へ


コロナ禍だったこともあり、各国の入国制限の確認に時間を取られた。
- ジョージア:ワクチン接種証明があればOK
- スペイン(トランジット):ワクチン接種証明が必須。EU デジタル証明書を Spain Travel Health で取得
- トルコ(トランジット):ワクチン接種証明があれば PCR検査不要
- 日本(帰国時):出国前72時間以内の検査証明書提出、ワクチン3回接種証明で待機なし
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ジョージアはエリア対象外(乗り継ぎ地のスペイン、トルコは利用可能)。別途SIMカード購入が必要。OneSimCard International SIM Card の eSIM World を検討した。
主催者への提出書類(5月1日締切)
- 医療情報と緊急時の連絡先
- パスポート、保険証(補償内容)コピー
- ワクチン接種証明コピー
- 医師の診断書
- 誓約書への署名
装備
サハラマラソンの装備をほぼ流用できるが、ジョージアの天候を考慮した 防寒装備 が追加で必須となっている。

ジョージア特有の追加必須装備
- WARM FLEECE / BASELAYER / MIDLAYER × 2
- WARM SOCKS × 2
- WARM LONG PANTS × 1
- GLOVES × 1
- WARM HAT × 1
上記以外はナミブレースと同様の装備リスト。レース前の食事については大会本部に要確認。
コロナ禍の追加装備
- マスク(屋内・キャンプ移動時用)
- 個人用消毒スプレー
食事・補給
- セルフサポート形式:7日分(実質6日分)の食料を自分で背負う
- 1日 2,000kcal 以上推奨
- 朝はフリーズドライ+カロリーメイト系、昼は行動食(ナッツ・ジェル)、夜はアルファ米+フリーズドライというステージレース定番構成
- レース中、CPで配られる水以外の補給は基本なし
- ただし Day 5 のロングマーチでは CP4でサプライズのコカコーラ配給 あり
- 休息日(Day 6)には大会から ジョージアのローカル飯ハチャプリ+新鮮野菜(トマト・きゅうり)のサプライズ配給
レースレポート
Day 1:Passing through Algeti National Park — 39.5km / スタート 8:00
レース初日。雲行きが怪しく、霧が出てきたので、スタート時間をずらすかもしれないとの話があったが、予定通り 8 時スタート。

選手が一斉に草原の中を駆け出していく。私は2018年のサハラマラソンで一緒だった日本在住、ウェールズ出身の クリスおじさん の後にピッタリくっついていく。
クリスおじさんは世界中のステージレースに参戦しまくっている猛者で、サハラマラソンばかり出続けていた私に「世界にはもっとすごい景色があるんだから、他のレースにも出た方が良い」と言い放ち、私の 4 Deserts Grand Slam+ 挑戦のきっかけとなった人物だ。

濃霧の中の集団遭難
スタートしてから 1 時間もしないうちに、濃霧でコースマーキングのピンクフラグを完全に見失う集団ロスト が発生。
予兆はあった。スタートしてからすぐ辺りが霧に覆われ、ただ何も考えず前のランナーについて行ったら、途中からマーキングを見ていないことに気づき、慌てて戻ってコースに復帰した。「この霧やばいな、気をつけないとな」と思った矢先に、再び見失った。

クリスおじさん、イギリス人選手、日本人選手のWさん、後ろからやってきた何人かと立ち止まっていると、深い霧の中から ホイッスルの音。音のする方向に向かうと前方を走っていたランナー達がいた。次々に合流し、結局 25人(参加者41名中)が集まった。
電波が届き、ランナーの中にGPSを持っていた人がいたので、グランドスラム仲間のアメリカ人選手 ジョン が WhatsApp で大会本部に現在地を送信。大会車両が迎えに来るので動かず待機との指示を受けるが、いつまでも車両が来ず、スイーパーも来ない。
レース初日、しかもレースは始まったばかり、混沌を極めてきた。
寒さでガタガタ震え出す選手も出てきて、みんなで固まって暖を取る。話は二転三転し、大会運営の手際の悪さにイラつき始める人たちも出始めた。結局、CP1のGPS位置情報をもらい、皆で移動することに。
元軍人 で責任感ありまくりのジョンがリーダーシップを発揮。慎重にルートを探しながら、歩みを進めていく。こういう時に出てくる、その人の本質、人間性。
分岐とCP1到着
分岐に到着。


左に進めばあと 5km くらいで CP1、右に行けば数100m で道路に出る。ジョンが多数決を取り、皆の答えはもちろん「左!」。

霧が晴れてきて、村らしき集落に入る。

おおおおーっ、ついにコースマーキングのピンクフラグがあった!
5時間ほど彷徨ってようやくCP1に到着。Racing The Planet 創始者のマリーがいて、皆一斉に詰め寄って不満をぶちまけるが、「とにかく早くCP2へ向かいなさい!」とマリーの一喝。ジョンには「ありがとう、ジョン。本当に感謝している」とお礼を伝えて先に出発。この日のジョンの行動は一生忘れないと思う。
CP2への急登、CP3での悲報
CP2に向かうトレイルが地獄。余分に 6km 歩いた上に消耗しているところに、急登、山登り。

CP2 で朗報:「CP3に着いたらマイクロバスが待っているから、そこからはバスでキャンプ地まで」。CP3 からゴールまで約 6km、ロスト分 6km と上手いことバランス取れてる、とほくそ笑む。
国立公園を抜けて、集落へ。


CP3に到着するが、ここで 悲報:
「あと残り6kmがんばってね。」
えっ?マイクロバスでキャンプ地に向かうんじゃ!?膝から崩れ落ちた瞬間。気持ち的にはCP3がゴールのつもりで向かっていたのに……。
ラスト6km、泥道とゴール
ボランティアスタッフに文句を言っても仕方なく、気持ちを切り替えてラストスパート、残り6km。


村の道路は舗装されていないので、雨上がりはぐちょぐちょのドロドロ。最初は水溜まりを避けていたが、ハマって靴がぐちょぐちょになったらどうでも良くなる。

村を抜け、草原の中に今日のキャンプ地が見える。

約12時間かけてステージ1をクリア。色々あって、ほんと疲れた。

Day 2:Tsalka Reservoir – from the west to the east — 45.8km / スタート 8:00
昨日は散々な目にあった。トップ集団もロストしていて、途中でスイーパーと遭遇したそう。結局、迷わずにきちんとコースを辿って行けたのは2-3人位 だったという。
昨日のリタイア仲間
- テントメイトのイスラエル人:リタイアし、テントに戻ることなくトビリシヘ。CP2に向かう急登で遭遇した時はかなり疲労していて苛立っていた様子
- 最年長の韓国からやってきたおじさま:相当体力を消耗し、CP2でリタイア。日本人選手Wさんとゴールに向かっている時、おじさまを乗せた車両が一時停止し、別れの挨拶をしてくれた
今朝のブリーフィングで、レースディレクターのジーナが「みんな良くやった」と労い、「フッフー!」と盛り上げてくれるのだが、それが癇に障ったのか、白けた空気が流れていた。
今日は 川渡り があるとの説明だが、ジャングルで川渡りを散々やってきたので楽観視。
草原から村、そして川渡りへ
8時スタート。まずは草原から村へ。

村に入ると、どんな家に住んでいるのか、どんな家畜を飼っているのかを観察する心の余裕ができた。

村の人たちはフレンドリーで、ニコニコしながら様子を見ている。昨日は村の女の子が駆け寄ってきて、摘んだ草花をくれた。
また草原へ。川渡りは思ったよりは浅く、足首が浸かるくらいでなんてことはない。

一面がお花畑のような草原を轍に沿ってひたすら歩く。

天気が良かったら最高なんだけどなあ。
古い教会、ジョージア正教
CP2を抜けると、舗装されていない道路に変わり、CP3は 古い石造りの教会 のそばにあった。

古い教会の中を見てみたい衝動を我慢して先を急ぐ。緩やかな上り基調となり、丘の上には十字架が。

ジョージアは キリスト教を国教 とし、国民の大半は ジョージア正教 の信者だ。
再びの濃霧、そしてゴール
辺りが濃い霧に包まれてきた。昨日の濃霧でのコースロストの恐怖が蘇る。

ピンクフラグを見失わないよう慎重に。運よく、この道路を真っ直ぐ進んでいくだけだった。

霧も晴れ、心に余裕が出てきたのでブツブツ喋りながら動画を撮る。
そして、ゴーーーール。

ゴールを祝うかのように晴れ間が見え、すごい景色を拝むことができた。

Day 3:Ktsia-Tabatskuri Protected Area — 37.9km / スタート 8:00
3日目、相変わらず天気が良くない。レースの支度をしていると、イロキ君 がレースディレクターのジーナと真剣な表情で話している。遠目から見ると、チャイニーズマフ●アが恫●しているようにも見えなくもない……(笑)。

イロキ君は私が今から12年位前にランニングを始めるきっかけを作った人で、2019年のサハラマラソンで一緒に走っている。
「何話してたん?」と聞くと、昨日トップ選手達がコースを見失う事案 があったらしく、原因は 村の子供達がピンクフラグを抜いた から。レース初日の件といい、ある程度予測できることではないかと、色々と「提案」をしていたとのこと。
濃霧の中の出発、ジミーの背後
8時スタート、また辺りは濃い霧。

初日からずっとレインウェアが手放せない。
舗装されていない赤茶けた道をひたすら進む。森に入った。

濃い霧が晴れ、雲の隙間から太陽が覗き、気温が上昇し始める。CP1 に着いたらレインウェアを脱ぐ。
背後にピッタリくっつく 香港系南アフリカ人選手。「抜いていいよ」と言うと、「いや、君のペースがちょうどいいからこのままついて行きたい。君は僕のペーサーだ」と言う。
ビデオジャーナリストのインタビュー
ビデオジャーナリストの マイケル と遭遇。歩きながらでいいということでインタビューを受けた(無事に採用された)。
いい天気になった。

予定通り、CP1 でレインウェア、パンツを脱いでザックにしまい、CP2 へ。森を抜けると緩やかな上り基調。

南アフリカ人選手は登りが苦手なのか、いつの間にかいなくなっていた。

草原と山の美しい緑に癒されながら、テクテクと山道で歩みを進める。
カナダ人選手との珍勝負
CP2を抜けると、下り基調。
前を シンガポール在住のカナダ人選手 が片足をびっこ引きながら、片手でストックをつきながら歩いている。声をかけて早歩きで追い越すと、彼が小走りで私を抜き、数十m前で再び歩き始める。私が追いつくと、また小走りで抜かれる。
ってことを何回か繰り返す。って、な、なんなの??
CP3が見えてきたので、彼を走って抜くことに。彼もペースを上げて追いかけてきて、CP3でお互い顔を見合わせて 大爆笑。このラストスプリントで足の具合が悪化したのか、CP3を抜けてからは彼の姿を見ることはなかった。
メルヘンの世界、そしてゴール
ゴールまでの残り 6km は、草原の中を一人旅。

いやあ、メルヘンの世界 ですなあ。
ゴール手前 3km くらいで、前方を日本人選手のSくんがゆっくり歩いている。後から早歩きで近づいて声をかけたら、えらい驚かれた。「僕、ビビリなんで」と。
ゴールは草原の中の村の サッカー場みたいな場所 だった。

近くの村の子供達がやってきて、ハイタッチしてキャッキャと賑やか。サッカー場の片隅に穴掘ってトイレ作ってるけど、これ大丈夫なん?

Day 4:Georgian Villages — 37.6km / スタート 8:00
4日目。今日はジョージアの村々を渡り歩く。レース前に配られたコースノートによると、この地域は 旧石器時代からの先史時代の人々が暮らしていた とのこと。考古学の発掘調査では青銅器時代初期の居住跡、武器、道具などが見つかったらしい。村々を見て回るのが楽しみ。
スタートからザンビア人の後ろへ
8時スタート。キャンプ地の村を離れて、草原へ。

クリスおじさんの後を追いかけるようにスタートしたが、クリスおじさんの歩きは早く、キロ9分台くらいで進んでいるので少しずつ引き離されていく。

それでも、今日は少し歩きのペースが上がったのか、目の前を今までコース上で見かけなかった テントメイトのザンビア人 が歩いている。

彼はノルウェーとザンビアのデュアルライフ。ザンビアに来るなら、ビクトリア滝、ザンベジ川クルーズとか色々案内すると言う。
石造りの村、おじさん達のゲーム
村に入る。


石造りの建物が長い歴史を感じさせる。

村の中心部に憩いの場みたいな所があり、おじさん達がゲームに興じていた。

これまで村々を渡り歩いていて思ったのだが、村の男性陣……暇なの?あのぅ、仕事していますか?
高度を感じない高原
そして、村を抜ける。


このレースは毎日草原、丘、村をずっと渡り歩いているが、実は 初日は1,616m、2日目は1,500m、3日目は1,950m、今日は1,809m地点からスタート している。
不思議と高度を感じさせない。
サプライズの早ゴール、避難所へ
ぼこぼこした砂利道を外れ、草原の中に入っていくと、チェックポイントらしきテントが見え、ドンドコドンドコと太鼓の音。これはゴール地点でスタッフが叩いている太鼓の音色と同じ。
辿り着くと、スタッフが太鼓を叩いていた。
「ここがゴールよ。これからマイクロバスで避難所に行くわよ。」
ん?聞き間違えた?「そうよ、え、何?もっと走りたいの?なら、走ってきてもいいわよ」。ここで終わりだった。
泥で汚すなと座席をビニールで覆ったマイクロバスに乗って、村の集会所のような 避難所 へ運ばれる。


今夜から天気が崩れて荒天になるらしい から避難になったと。今回はいい仕事してますね。
衝撃のトイレ
避難所で話題沸騰となったのは トイレ。トイレから戻ってきた人達に聞くと、急に顔つきが暗くなり、微妙なリアクションをするのだ。今回のレースは地面に穴ほって板のせただけのトイレなのに、それより酷いトイレが存在するの?
そして、その時がやってきた。行ってみて納得した。
お、、おぅ、、、。

Day 5:The Long March — 73.6km(実走63km) / スタート 8:00
ロングマーチの日。朝のブリーフィングで コースを短縮する旨が伝えられた。短縮されるのは「Very Difficult」とコースノートに記載がある アブリ要塞(Abuli fortress) がある山の頂上までの道。距離10km短縮。頂上の天候がよろしくないというのが理由。

序盤の村を抜けて
8時スタート。トップ選手が一斉に村の道路をひた走る。

村を抜けると草原。お馴染みの風景だ。

今日は長い1日になるのだから焦らず、自分のペースでゆっくりと進む。
村に入るとカメラマン達が待ち構えていたので、ちょっと走ってカッコつけてみたりする。

調子が良く、いい天気でご機嫌なので、歩きながらブツブツ言って動画撮影。
趣のある石橋の村、CP4のサプライズ
CP4 に向かう途中、草原を抜けると、なんとも趣のある 石橋がある村 に入った。


ここも美しい村だったな。
天気が悪いと、村の道路がぐちょぐちょ。家畜の糞尿が混じっているのか、なんとも素敵な匂いがする。
畑の中の畦道を通る。何を栽培しているんだろう、じゃがいも?

その畑の中に CP4 があった。

ここで サプライズでコカコーラ が配られた。なんとなく今日この辺りでコーラもらえたりして、と思っていた。冷たいコーラで糖分チャージしたら、再びコースへ。

ジョージアはほんと野花が可愛らしい。メルヘンチック。
線路に沿って、テントメイト・アイジン
線路に沿って歩く。線路は続くよ、どこまでも。

途中、ずっと前を歩いてたテントメイトの 中国系スイス人選手・アイジン が立ち止まり靴を脱いで足を見ている。彼女はナミブレースで初めて会って、このレースでテントメイトとして再会した。マメができたらしい。声をかけて抜いたが、しばらくしたら追いつかれて抜かれてしまった。強い。
ウォーレンおじさんのライバル意識
CP5 を抜けて、ゴールまであと 12km が一番辛い。舗装路をずっと歩かされる。
前に見覚えのある後ろ姿の日本人男性、Sくん。大会車両が止まって、車の中から誰かが出てきてSくんと話し、ハグしているように見える。あ、昨日リタイアした 韓国人選手 だ。
Sくんに後から驚かさないように声をかけてから抜いた。すると背後からリズム良く走ってくる音。振り向くと、アメリカ人選手のウォーレンおじさん だった。あの時、完全に叩きのめした(?)と思ったのに、最後の最後で走れる力が残っていたことに驚き。
このウォーレンおじさん、なぜか私をライバル視していて、
「今日はお前が速かったな。」 「今日は俺が勝ったな。」
と毎日話しかけてきて、勝手に勝負の土俵に引きずり上げてくる。今日は決定的な差をつけて黙らせてやると思って序盤から引き離しにかかり、CP4 の時点で完全に引き離したと思ったのに……。もう彼を走って追いかける元気はない。
ラスト、再びの雨とインタビュー
ラストスパートの林道に入ると、天気が崩れ始める。

雨が降り始めたが、ゴールまであと少しなのでそのまま歩く。
そして、また、ビデオジャーナリストのマイケルに捕まり、インタビューを受ける(これも無事に採用された)。
そして、ついに……

ゴーーール!!! 長い1日が終わった。日が暮れる前にゴールできて良かった。

少し前にゴールしていた アイジンのお出迎え がめちゃくちゃ嬉しかった。

Day 6:休息日
ロングマーチの後は休息日。昨日、日没前にゴールしたので、今日は丸一日休養に充てることができる。翌日は 9km の下りのウィニングランで、完走は手中に収めたようなものだ。

和やかなキャンプ、足湯と靴下事件
キャンプ地は和やかな雰囲気。仲間と談笑、お洗濯、昼寝、周辺を散歩したりと、皆それぞれの時間。
私は仲間に見習って、タライに水とお湯を入れて 足湯 を楽しむ。ついでに靴下も洗濯したのだが、靴下が まじ臭い。今まで嗅いだことのない物凄い匂い。レース中ずっと家畜の糞尿混じりの水溜まりや泥々した道路を歩いてきたからだろう。洗っても洗っても匂いが落ちない。
テントメイトたち
ザンビア人テントメイトはファミリープランで奥さんとお子さんがやってきて、今晩は家族のテントで一緒に寝るという。

ということで、ブリット(オランダ出身) と アイジン(スイス出身) の女3人で広々とテントを使える。初日にイスラエル人選手がリタイアしたが、以降はリタイア者を出すことなく今日を迎えた。
- ブリット:ウォーカー。歩みが遅いことを気にしていて、最初は弱音を吐いていた。「私、オランダだから山登りの練習なんてあんまりできないし……」。かと思ったら、「パキスタンの山に登った時は〜」とか訳のわからない事を言う面白い人
- アイジン:スイスというお国柄もあり山登りが趣味。だから凄いパワーウォーカーなのかと納得。ナミブレースの時にはそこまで話さなかったので、テントメイトになって良かった
ローカル飯のサプライズ配給
な、な、な、なんと!

サプライズでジョージアのローカル飯、ハチャプリ と、新鮮なお野菜(トマトときゅうり)の配給があった。ありがたや!ずっと腹減ったを連呼していたイロキ君はむちゃくちゃ食ってた。

ウォーレンとの「2分差」
ウォーレンおじさんがやってきて、
「俺とお前は今総合成績が2分差で、俺が勝っている。」
と言うではないか。

もう、やめてよー!別に争っているわけではないのに、なんでそんなこと言うかなぁ……。
ん?待てよ?2分差?明日は確か 9km の下り。十分に順位を覆す事可能。
よし、明日は全力疾走して、圧倒的な差をつけて、もう2度とそんなことを言わせないようにしてやろう(ニヤリ)
明日はクリスおじさんに怒られてもいいから ガチ走り してやる。(クリスおじさんは私が走っている姿を見ると、「ズルした!」と怒る)
天気急変と雹
ジョージアの天気は変わりやすい。今日は特に酷くて、晴れたと思ったらスコール、また晴れる、またスコール、を繰り返す。テントに逃げ込んだり出てきたりと忙しい。
今日は まさかの雹!テントに逃げ込む時に、大粒の雹が背中に直撃して痛かった。
さ、いよいよ明日で最後だ。全力疾走してやる。
Day 7:Final Footsteps to Vardzia Caves — 9.3km / スタート 8:00
最終日は下り 9km。後方の選手が先にスタートし、残りの選手がその後スタート。
後方の選手のスタートを見送って、私もスタート。2分差となっているウォーレンおじさんには圧倒的に差をつけて勝ってやる……。
って、えええええー!! 皆、めちゃくちゃ猛ダッシュで坂道を降っていく。いつも後ろにいた選手でさえも、私より前を走っているではないか!
嘘でしょ?
当然、ウォーレンおじさんも前を走っていて、その差がどんどん広がっていく。そして、私が走ると「ズルしたでしょ!」と言っていた クリスおじさんまでもが走っている。
な、何なん?!
気がついたら、後ろに スイーパー達 が差し迫っている。スイーパーも走っているのだが、ちゃんとコースマーキング回収してんの??

スイーパーが近づいた時、ガーミンの時計を見ると キロ6分 のペースを刻んでいる。それでも後方なん??
凄いな、みんなの最後のイタチっぺってやつは。もう戦意喪失ですわ。
フィニッシュとチームジャパン
自分のペースを維持して、何とかフィニッシュラインを踏んだ。

やっと終わった。天候にとにかく振り回されたレース。


振り返り
結果
- 出走者: 42名(うちDNF 4名)
- 総合順位: 26位 / 出走42名中
- 完走
このレースの特徴
このレースで強く印象に残ったポイント:
- コーカサス高原の天候の極端な変わりやすさ。6月開催にも関わらず濃霧・スコール・雹までも経験。砂漠系ステージレースの装備感覚で来ると痛い目に遭う
- Day 1 の集団遭難。コースマーキングを濃霧で見失い、25人(参加者41名中)がコース外で立ち往生。ジョンのリーダーシップで CP1 へ復帰したエピソードは生涯忘れない
- 村々を渡り歩く文化体験。旧石器時代からの集落、ジョージア正教の古い石造り教会、フレンドリーな村人、暇そうにゲームに興じる村のおじさん達
- Day 4 の早期回収(避難所行き)。荒天予報を受けて運営が選手をマイクロバスで避難所へ移送。状況判断としては素晴らしい
- Day 5 ロングマーチでの CP4 サプライズコーラ配給。きついロング日中盤で出てくる冷たいコーラは何物にも代え難い
- 休息日の隠れた問題:靴下臭事件。家畜の糞尿混じりの泥道を歩き続けた靴下は、いくら洗っても匂いが落ちない
- ウォーレンおじさんとのライバル劇。Day 5 で「2分差で俺の勝ち」と煽られ、Day 7 でガチ走りを決意 → スタート瞬間に全員猛ダッシュで完敗するというオチ
これから挑戦する人へ
- 防寒装備は絶対に妥協しない。フリース・ベースレイヤー・ミドルレイヤー × 2、暖かい靴下 × 2、ロングパンツ、グローブ、暖かい帽子。6月でも雹が降る土地である
- レインウェア上下は実質必須。装備リスト上「必須」とまでは書かれていなくても、毎日のように雨・霧に遭遇する
- GPS / オフラインマップの準備。Day 1 の集団遭難のように、ピンクフラグだけに頼ると詰む状況がある。コース GPX を事前にダウンロードしておくこと
- 靴は予備のソックスとセットで対策。村道のドロドロを歩くので、毎日替えの靴下を用意し、休息日に靴下臭対策(重曹・酸素系漂白剤)を計画
- コース上の村人との交流を楽しむ余裕。子供が花を摘んで渡してくれる、ハイタッチを求めてくる、おじさんがゲームに招き入れる……このレースは順位より文化体験を取りに行ったほうが幸せ
- 天候による早回収・コース短縮はあると思っておく。Day 4 の避難所、Day 5 のアブリ要塞回避コース、いずれも運営判断は妥当
天候には散々振り回されたが、ジョージアの高原・村・教会・洞窟修道院と、4 Deserts シリーズの中でも一線を画す独特の文化体験ができたレースだった。