出典:本レポートは note.com の Rena 氏(@rena_fr)執筆のマガジン「ラップランド 2022」を、著者の許諾を得て転記しています。再利用時は必ず原典 URL と著者名を併記してください。
練習・準備
Lapland Race って?

Racing The Planet 主催のレース。4 Deserts Grand Slam Plus 称号獲得に向けてのレース第3戦 にあたる。フィンランドの北の最果てに位置するラップランド地方を 7日間 250km。
4 Deserts シリーズの中核4戦(Namib・Atacama・Gobi/ジョージア代替・南極)に加え、Roving Race を1戦完走すれば「Plus」称号となる。今回のラップランドが Plus 用の Roving Race にあたる。
主催者・公式情報
- 主催: Racing The Planet
- 公式: Racing The Planet — Lapland
- 集合: ロヴァニエミ(Rovaniemi)
- 解散: ユッラス(Yllas)
スケジュール
- 開催日:2022年8月14日〜20日
- 総距離:約250km(6ステージ+休息日)
- Day 1: Over The Great Pallas Fell / 33.6km
- Day 2: The Three Lakes / 38.3km
- Day 3: The Old Postal Road / 39.6km
- Day 4: Between The Great Fells / 40.2km
- Day 5: The Long March Through The Land of Reindeer / 81.2km
- Day 6: 休息日
- Day 7: The Final Footsteps to Yllas / 11.9km
入国時の事前情報
フィンランド入国の時、入国審査官に「ラップランドは 蚊が多い(それも想像以上に)」と聞かされ、かなりビビっていたのだが、結果的に蚊は全くと言っていいほどいなかった。時期的なものか?
装備
Racing The Planet 主催レース共通の必須装備に加え、ラップランド特有のアイテムが追加:
ラップランド特有の追加・配慮装備
- 暖かい長袖・帽子・グローブ:8月開催だが朝晩の冷え込みは想像以上
- 虫除け:入国審査で蚊に注意と言われた(今回は不要だったが時期次第)
- 足首までガードできるシューズ/ゲーター:沼地・雑木林対策
- 水着・タオル:ドロップバッグ 2 に水着とタオルの指定。休息日キャンプ地のサウナ用
- Day 1 CP1 では水を最低 2.5L 携行:CP2 までは15km、山登りがあるためスタッフから指示される
コロナ禍特有の事情
- レース前抗原検査で陽性となった選手はDNS
- 同じホテル部屋の選手は 濃厚接触者として、テント単独設営の隔離扱い でレース継続
- レース開始後も同テント内で発症者が出た場合、テントメイト全員が隔離となる時期があった
- 4日目以降は、自覚症状ありの場合のみ自主的に検査を行う方針に切り替わった
食事・補給
- セルフサポート形式:7日分(最低14,000kcal)の食料を自分で背負う
- レース前の野営地での食料(3〜5食分)も自前
- レース中、コース脇のブルーベリーが摘み食い放題。「森と湖のラップランドは、いつでも補給・給水ができる天国のような場所」
- Day 4 ゴール後、大会側のサプライズで トナカイのスープ の提供あり
- Day 6 休息日には、キャンプ地のオーナー夫婦から クッキーとお茶の差し入れ
レースレポート
Day 1:Over The Great Pallas Fell — 33.6km / スタート 8:00
さ、寒い。暦の上では夏のはずなんだが、フィンランドの北の最果てに位置するラップランド地方の朝の冷え込みがきつい。(その後のアタカマ砂漠で更にきつい目に遭うが)
夜が短いラップランド地方は日の出も早い。
スタート前のブリーフィングで、本日のコース説明を受けるが、CP1では水を最低でも 2.5リットル 持って出ていくこと が告げられる。CP2までは15kmで、この日のコースの難所、山登りがあるためだという。ただでさえ初日で荷物が多いのに、更に+1kgか……。
沼地の渋滞、最初の試練
8時ちょうどにスタート。シングルトラックを隊列を組むようにして進んでいくと、いきなり渋滞 にはまる。
何事かと思ったら、沼地 だ。草に隠れていて見えないが、木製の道があるのだが、川が流れているところがあって、そこを慎重に渡っているため、渋滞となっているのだ。
最初、事情がよく飲み込めておらず、なんでみんな一列になってんの?横から抜いていけるんじゃないの?と考えていたのだが、同じように考えていたアメリカ人選手が脇から抜こうとしたら、思いっきり膝上まで沼にハマっていた。
あ……そういうことか。
幸いにして真ん中より前の方の位置でスタートしていたので、さほど待つことなく渋滞を抜けることができた。

山登りと頂上の絶景
そこからは林道になり、走りやすくなる。CP1で、水を 2.5L 持っていくよう指示通り給水。
林道からだんだんと森林限界に入ったのか、見渡す限りの草原のような場所をゆっくりと登っていく。1,000m とか 2,000m とかそんな高い山を登っているわけではないはずなんだが……。


山の頂上らしき場所に到着すると、見渡す限り森と点在する湖 が目の前に広がっている。日本にあるようでない息を呑むような美しい景色だ。
下りと森、転倒、ブルーベリー摘み放題
難所の山登りを終えて、CP2に到着したら、今度は下りだ。

やったね、ボーナスステージだ。ただただ重力に体を任せて下っていく。そして、再び森に入る。

森にはキノコやベリー類が群生しており、キャンプ地に到着した日のブリーフィングで、どれが食べれて、どれが食べたらいけないのかレクチャーを受けている。
食べるとしたら ブルーベリー かな。あちこちにたわわたわわと群生していて、摘み放題、食べ放題。
レースが行われているこの場所は、サマーハウス(別荘)が所々に点在していて、そこの住人らしき人たちをちょいちょい見かける。犬の散歩していたり、それこそキノコ狩りしていたり。
とある家族の目の前で、思い切り、木の根に足を引っ掛けて すっ転んでしまった。その家族、びっくりして私のところに駆け寄ってきて心配してくれる。「Take it easy. 」なんて言われる始末だ。なんか、心配かけてごめんなさい。
ゴール、日本人ワンツーフィニッシュ
CP3を抜けると、埃っぽい林道をひたすら早歩きしてゴール。
ゴール地点では、日本からやってきたボランティアスタッフ、サンディさん(4デザーツ日本事務局)と NHKグレートレースでお馴染みの若岡氏 が迎えてくれた。
「どうだった?」と若岡氏に聞いてみると、「そういう聞き方はだめよーw。もっと敬わないとw。」と意味あり気な笑みを浮かべるサンディさん。おー、そういうことか、全てを察しましたわ(笑)。
今日は若岡氏とモリモリ、日本人選手がワンツーフィニッシュ。凄いね。

Day 2:The Three Lakes — 38.3km / スタート 8:00
2日目の朝。お湯の番をしているナミビアで出会ったドイツ人ボランティアスタッフ、ヤンカが「お湯って日本語でなんていうの?」と藪から棒に聞いてくる。
昨晩、22時過ぎに日本人選手Mさんが晩御飯を食べるからお湯がほしいと言ってきたらしく、お湯は22時までしか提供していないと伝えるのに難儀したらしい。シンプルに「お湯はありません。」「お湯、ない。」でいいんじゃない?ってことに。「オユ、オユ、オユ」と口に出して反芻するヤンカが可愛らしい。
リーダーズビブが日本人選手の手に
レース前のブリーフィングでは前日のレース結果とともに、現時点での男女総合1位の人には 黄色いリーダーズゼッケン が手渡される。

そのゼッケンは日本人選手の手に渡った。何だか、感慨深いなあ。
クリスおじさんのペーサー、川渡り
8時レーススタート。前を陣取った選手たちは一気に林道を駆け抜ける。

なるべくペースを崩さずに、密かにペーサーとしている 日本在住のウェールズ人選手、クリスおじさま の後をついていく。キロ10分くらいのペースを淡々と刻んでいるのでちょうど良いのだ。
クリスおじさんは世界中のステージレースに出まくっているだけあり、500mlのペットボトル片手に、ちょっとそこまで(早歩きで)散歩してくるみたいな余裕 な感じがすごく良い。
CP1を抜けてすぐに 川渡り だ。

不思議な転倒、毒キノコ
ずっと変わり映えしない林道でちょっと飽きてきたところで、こんなコースを挟み込んでくる。

急に目の前を歩いていた人が(何もないのに)転倒したので、えええーっ!とめちゃくちゃ動揺したが、転倒した本人は何事もなかったかのように立ち上がり、淡々と歩み始める。
ここからはゴールに向けての楽しい下り基調の林道となる。

面白い看板だな。Demanding Slope ってどういうことよ?試される坂なのか?
うわー、スーパーマリオに出てきそうなキノコ あったよ。

こういう思わず手に取ってしまいそうなカラフルなキノコが毒キノコだったりするんだよねえ。後から友人より ベニキノコダケ という毒キノコで、ヨーロッパでは幸福を呼ぶキノコ と呼ばれていると教えてもらう。
古い釣り小屋のキャンプ地
本日のゴールは 湖畔にある古い釣り小屋、かつては漁村だった場所 らしい。

テントが張ってあるキャンプ地までは、湖畔をあと 4-500m ほど歩いていく。
キャンプ地に着くと、とっくにゴールしていた若様がニコニコ笑顔で迎えてくれた。そこに、朝に話題となった日本人選手Mさんの姿があり、ちょいと脳がバグる。あれ?私、コース上でMさん全然見かけてなかったし?
Mさんは 足を痛めて、無念のリタイア とのこと。4デサーツレースの常連でご高齢のMさんは、2013年にサハラマラソンでご一緒している。せっかく、ヤンカがお湯って日本語覚えたのに、残念だ。
その前の日は4 Deserts Grand Slam+ 獲得を一緒に目指している アメリカ人選手、ジョンも足の痛みでリタイア した。ジョージアでの集団遭難時にリーダーシップを発揮してくれた、あのジョンだ。
ステージレースで1番好きなのはゴールした後に、みんなでワイワイと他愛のない話をして過ごすこの時間だ。楽しい。
夜8時頃になっても、まだまだ明るいラップランド。

大会主催者が地元のシャーマンを呼んでお話を聞く機会を設けてくれた。

Day 3:The Old Postal Road — 39.6km / スタート 8:00
3日目。昨日はほとんど林道でちょっと退屈だったねーなんて、クリスおじさんと話していたら、今日は初日ほどではないが山登りがある というではないか。
8時スタート。まずは昨日と同様に林道をテクテクと歩く。
森と湖に囲まれ、癒される景色だ。所々にサマーハウスらしき建物がぽつんと建っている。

避暑地って感じでいいよなあ。湖畔で釣りしたり、森でキノコ狩り、ベリー狩りしたり、庭でBBQしたり、と勝手にフィンランド人の夏休みを妄想しながら歩く。

山頂のご褒美と Old Postal Road
林道から森に入り、シングルトラックをなぞるように山登りが始まる。


結構登ってきたなって、頂上らしき場所に着くと、ご褒美のような素晴らしい景色 が待ち構えていた。そして、ビデオジャーナリストのマイケルも待ち構えていた(笑)。
案の定、止められて、胸にピンマイクをつけてインタビューに答える。まあ、私はビデオの尺に困った時のピンチヒッター的なもんだと、ボツになるかもしれないと思いながら喋っている。
CP2を抜けると、Old Postal Road(かつての郵便道路) と呼ばれる道に沿って歩く。19世紀頃に郵便配達で使われた道 だという。
CP3でブルーベリー摘みのサンディさん
CP3に到着すると、笑顔のサンディさんに迎えられる。

選手が誰も来なくて、時間があるときは ブルーベリー摘んでいた らしい。しっかり満喫していらっしゃる。
と、テントメイトのスイス人、マーカス が簡易イスに座ってかなりお疲れの様子ではないか。彼はアメリカ在住のITエンジニアで、4 Deserts Club(4砂漠制覇済み)メンバー だ。いつも私より先を走っているのにどうしたんだろ。彼と少しだけ話して、先にゴールへ向かって出発することにした。
残り11km、再び(飽き気味の)林道だ。
ゴール後、台湾選手との再会、足のむくみ
ゴール後は仲間とワイワイ。

台湾からやってきた ニックとイヴァン は、今年のサハラマラソンで初めて出会った。その時、ニックはひどい日焼けをして、腕と足にひどい水脹れを作ってしまい、包帯でぐるぐる巻きにされていた。
まさかラップランドで再会するとは思わず、集合場所のロヴァニエミの街でぱったりあった時はマジでびっくりしたわ。
しかし、なぜか分からないが、体がむくみ始めている。塩分もそんなに取った記憶はないんだけどなあ、なんでだろう。

Day 4:Between The Great Fells — 40.2km / スタート 8:00
4日目。まさかこの日に 今レース最大のピンチ が訪れるとは夢にも思っていなかった。
ポエムのようなコースノート
今日もきっかり8時スタート。とにかくひたすら林道を突き進む。今日はCP3までほぼほぼ林道で、レース前に渡されたコースノートにも、
Dust road through mixed vegetation.(雑木林の中の砂埃の道) Dust road continues(砂埃の道が続く) Some more dust road…(さらに砂埃の道が続く)
と、もはや ポエムのような説明 になっている。


ちょっと小腹が空いたら、道の脇に無造作に生い茂っているブルーベリーを摘んで口の中に放り込む。森と湖のラップランドは、いつでも補給・給水ができる天国のような場所 である(笑)。
最後のチェックポイント(CP3)を抜けると、緩やかな上り基調となる。


果てしなく広がる地平線、ではなく森。砂漠とはまた違った景色、こういう思いもよらない景色に出会うためにステージレースに出ているのかもしれない。

本日も特に大きなトラブルはなくゴールした……かに思えたのだが、テントに戻ると何だかただならぬ雰囲気だ。
絶体絶命!テントメイトのコロナ陽性
私のテントはアメリカ人夫婦2人、イギリス在住のアイルランド人と香港人のカップル、そして彼らの親友のアメリカ在住スイス人の 6人。私がゴールした時には既にみんないたのだが、イギリス在住のカップルが慌ただしくパッキングをしていて、その作業をしている間はテントに入らないでほしいと言われた。
なんでも 香港人女性の体調が悪く、簡易キットでコロナ抗原検査をしたら「陽性」 だったと、彼氏の方は陰性だったが濃厚接触者でもあるし、一緒にレースを離脱するとのこと。
えーっ、マジかー。確かに彼女は夜中にコホコホ咳き込んでいたから、あれ?って思ったんだよな。
と、アメリカ人夫婦が「私たちも念の為、簡易キットで検査しましょう。」なんて曰うではないか。うわぁー、私、今のところ自覚症状ないんだけれども、陽性判定出たら、ここで即リタイアってこと?
うわ……これ、マジで終わったかも。4 Deserts Grand Slam+ 達成するはずが、こんなところで頓挫か?
今回のラップランドのレースは、レース前の抗原検査である選手が陽性となりDNSとなっている。レース開始1-2日でも色々わけがわからないことになっていて、4日目ともなると 自覚症状ありの場合のみ自主的に検査 という方針に切り替わっていた。
が、テントメイトのアメリカ人夫婦は熱い、正義感に満ち溢れておる。
「この際だから、みんなで検査して、白黒はっきりしてスッキリしましょう。」
で、彼らの親友のスイス人も(自覚症状ないが)陽性判定となり、ここで終了。毎日、彼のすぐ横で寝ていた私、絶体絶命 である。
持参した簡易キットで検査を試みるが、こういう時に限って「測定不能」になる。「じゃあ、メディカルテントで検査してもらったら?」と、何がなんでも検査しろ的な圧をかけてくる夫婦。
トナカイのスープで心を落ち着けて
ちょうどその時、大会側のサプライズで、ゴール脇にあるログハウスはカフェなのだが、そこで トナカイのスープ を提供するという。

美味しいトナカイのスープで心を落ち着けてから、メディカルテントで検査してもらうことにした。
その後、メディカルテントで、結果が出るまでの間の 悪夢のような15分 を過ごす。
結果は陰性。
首の皮一枚繋がったわ。

Day 5:The Long March Through The Land of Reindeer — 81.2km / スタート 8:00
5日目。今日はロングマーチ、81.2km と今までの倍以上の距離 となる。
女子総合1位のコロナ陽性離脱
レース前のブリーフィングで、現時点で 女子総合1位だったドイツ人選手がコロナ陽性のためロングマーチには出走せず、リタイア となったことを知る。悔しそうに涙を浮かべていた姿が印象的だった。私も、昨日の検査結果によっては、もしかしたらリタイアになっていたかもしれないと思うと、運の良さに感謝するしかない。

林道を黙々と、変わった形のログハウス
8時スタート。コースはお馴染みになった林道、雑木林の組み合わせで、ただ距離が伸びただけで山登りはなさそうだ。
雑木林の中から突如現れた建物。別荘かな?それにしても変わった形のログハウスだなあ。


CP1を抜けてしばらくすると、ボランティアスタッフがコース誘導をしていた。私の姿を確認すると「レナ!レナ!レナ!」とひたすら私の名前を連呼して応援してくれているのは、南アフリカからやってきた アメリア だ。同じグランドスラム仲間のアニムに密着してドキュメンタリービデオの撮影をしているのだが、レースのボランティアもやっている。ナミブレースで知り合い、ジョージア、そしてここラップランドとやってきた。
CP2でカットされたインタビュー、川渡り
CP2は何とも風光明媚な場所に置かれていた。

CP2の裏側には大きな川が流れている。ちょうどビデオジャーナリストのマイケルがいて、めざとく私を見つけると、「ちょっとだけ撮影いいかな。」とコースを少し外れた、川の流れがよく見える岩場に連れて行かれて、インタビューが始まった。
後から見たら、レース中にコース外れて、気前よく時間を割いてインタビュー受けたのに、ここ全部カットされてましたわ(涙)。
気を取り直して、雑木林の中を黙々と歩く。すると、遠くから人の声が聞こえてくる。何事かな?と思いながら近づいていくと、川渡り だ。
ボランティアスタッフが 小船での川渡り を手伝ってくれていた。良かった、ジャングルマラソンみたいに、自力で川渡りしなくて良いのね(笑)。
Mad Reindeer(怒り狂ったトナカイ)
CP3、CP4を抜けて、CP5に向かう林道を歩いていると、前方から大会車両がやってきて、スタッフにこう告げられた。
「この先に怒り狂ったトナカイ(Mad Reindeer)がいるから気をつけてね。」
え?怒り狂ったトナカイ?気をつけてねって、どう気をつければいいの?ここからCP5までは、狂ったトナカイが私の頭の中を占拠 する。
こういう時には必須装備のホイッスルで威嚇するとか?あー、ストック持ってないから、なんか武器になるような木の枝が必要かな?と考えているうちにCP5に到着する。

CP6からCP7、点滅ライト、深夜のゴール
韓国からやってきたボランティアスタッフ、ジュー が待ち構えていた。ジューはジョージアでは一緒に走った仲間で、今回はボランティアとして、そして次のアタカマ砂漠では選手として参加するとのことだ。
CP5で続々と日本人選手が集結して、ワイワイと楽しいひとときを過ごす。
重い腰を上げてCP6へ向かう。日暮れまでまだまだ時間はあるが、少しずつ冷え込んできている。なんの変わり映えもしない林道をひたすらテクテク歩く。
CP6に着いた時には少しずつ日が傾き始めていた。そこにちょうど日本人選手のTさんがやってきた。ステージレースが初めてとは思えないほど、安定したペースで距離を刻んでいくパワーウォーカーだ。
私も重い腰を上げて、CP6を出発する。遥か前を歩くTさんを見失わないように歩みを進めるが、どうもお腹の調子が芳しくなく、前後すぐそばにランナーがいないことを確認して、ひっそりとコースをちょい外れて おトイレに……(汗)。
CP7に到着した頃にはもう辺りが真っ暗になっていた。CP2にいた トナカイコスプレをしていたドクター がCP6に移動していて、なんか1人テクニカルパレードみたいな状態になっている。写真を撮っていなかったのが残念。
ザックの背後には後方選手の道標となる 点滅ライト をつけなければならないが、私の点滅ライトはあまり発光状態がよろしくないと、蛍光スティックをブスッとザックに刺される。次のアタカマ砂漠では新しいもの用意しないとなぁ。
ここからはゴールまで 9km くらいなのだが、辺りが真っ暗なこともあって、1番長く感じた区間 だ。途中、林道から舗装された道路に変わり、脇道を歩く。
深夜1時すぎ だったと思うが、静まったキャンプ地にゴール。疲れたー。

Day 6:休息日
ロングマーチの翌日は休息日。なんとこのキャンプ地には シャワー、しかもサウナも併設 されている。まさかレース中に本場フィンランドのサウナを堪能できるとは……いえ、嘘です。必須装備のドロップバッグ2に水着とタオルの指定があったから、うっすら期待していた。
サウナはテント毎に利用時間が割り当てられていた。

が、運悪く、私のドロップバッグ2は手違いでレース終了後の宿泊施設にあり、なぜか、同じテントで先日リタイアした人のドロップバッグ2が届いている。すぐに届けるように手配したとスタッフは言ったが、結局、届いたのは夕方頃で、もはやサウナにもシャワーにも入る気にならず……。
トップ集団のコース誤誘導事件
結局、1日の大半を火のそばで仲間とくっちゃべって過ごす。

なんでもロングマーチで トップ集団がCP2を飛ばしてしまうという珍事 が起きたとのこと。(だからコース誘導のボランティアスタッフがいたのか!)
それでどうなったのかというと、キャンプ地に着いた時に、スタッフから追加のコースを用意したと言われて、トレイルの折り返しを往復15-6kmくらい走らされた、と。結果、他の人たちより少し多く走っているそうだ。
レース中に誰それとこんなことがあった、あんなことがあったと皆と話していると、現時点で総合トップの若岡氏が、
「そんなことがあったんですね。僕はいつも孤独で走っていますから……。」
とボソッと言った。
はっ!そうだ、トップ選手は熾烈な争いをしている んだった。そして、のんびりとハイキング気分で歩いている私。同じレースに参加しているとは思えないな……(汗)。

キャンプ地オーナーの差し入れ
夕方頃、このキャンプ地のオーナー夫婦からの挨拶と クッキー(だったかな?)とお茶の差し入れ があった。なんとも有難い!
いよいよ、明日が最終日、残すは約 11km のコースだ。
Day 7:The Final Footsteps to Yllas — 11.9km / スタート 8:00(ウェーブ)
最終日!今日は後方に位置する選手、真ん中の選手、トップ選手と 3回に分けてのウェーブスタート となる。
「私、遅いんで1番最初のスタートで行きたいんですけどぉ。」と、ダメもとで大会スタッフにお願いしてみる。速攻で却下 された(涙)。
最終日の元気な選手たち
まずは後方に位置する選手たちが一斉にスタートした。その30分後(だったと思う)に私を含む、トップ選手以外の選手がスタートする。
案の定、皆さん、昨日たっぷり休んで元気が有り余っていらっしゃる。すごい勢いでスタートされましたよ。
って、え?気のせいか、トップをひた走っているRさんの姿が見えた。すぐそばにいたパワーウォーカーのTさんに私が見間違えていないか確認する。やはり間違いないようだ。すごい、最終日暫定1位じゃないっすか。(まだトップ選手がスタートしていないけど)
そして、Tさんもスタスタと前を歩き、姿が見えなくなった。周りにいた他の日本人選手達の姿もいつの間にか見えなくなっていた。恐らく、私が最後の方じゃないのかな?
韓国人親子「I'm positive」
しばらくすると、先にスタートしていたはずの韓国人親子3人組の姿が見えた。呑気にブルーベリー摘んでらっしゃる んですが?余裕だな。声をかけようと近づくと、彼らは手をかざし、近づくな的なポーズを取り、私にこう告げた。
「I'm positive.」
あー、そういうことか。昨日、自国への帰国にPCR検査結果が必要な人 は予め大会側が手配した町のクリニックに連れて行かれて検査していたのだが、その検査結果がってことか……。
じゃあ、また後で、と、ゴールに向かって歩みを進める。
モリモリのデジャブ、ジュクジュクの沼地
コースはトレイルに入り、苔がいっぱいのジュクジュクとした沼地っぽいところ でとても歩きにくいし、何だか嫌な感じー。
と、後から走ってくる人の気配がする。それも2人。もしかして?と振り向く。
若様とモリモリかと思ったら、若様と、え?君、誰?若様と誰かよう知らん、金髪モジャモジャの若者が競うように私を抜き去って 行った。
え?モリモリじゃないの?と思いながら歩き続けてしばらくすると、「レナさ〜ん」と私を呼ぶ声が聞こえてくる。振り返ると、今度こそモリモリだった。「ハァ〜、ダメですわ〜。」と言いながら抜き去って行った。あれ?ナミブ最終日のデジャブ か?
アメちゃんのお迎え、ゴール
ジュクジュクしたトレイルを抜けると、林道に入る。いよいよラストスパートだ。
と、前方から誰かやってくる。背に UAEのフラグ がはためいている。え?もしかして、アメちゃん??ゴールした後にわざわざコースに戻って迎えにきてくれたの?えー、嬉しい!
「携帯電話見かけなかった?」と、アメちゃん。「……見てない。」アメちゃんは走って、更にコースを戻って行ってしまった。
気を取り直して、ついにゴール!

ゴール地点には完走メダルを手にした 若様 とサンディさんがいて、大会側のサプライズなのか知らんが、総合優勝した若様から完走メダルを首にかけてもらった。いい記念になりました。メイドの土産というやつですな。
ゴール後はビールとピザ、最後のインタビュー
ゴール後はもちろんビールと、


ピザで祝杯 だ!
そして、またもやマイケルに捕まり、インタビューを受ける。
もう汗で髪ぐしゃぐしゃだし、ボロボロやん……(涙)。
完走した日本からやってきた選手とボランティアスタッフで集合写真。


振り返り
結果
- 出走者: 134名(うちDNF 26名)
- 総合順位: 76位 / 出走134名中
- 完走
このレースの特徴
このレースを通じて感じた特筆すべき点:
- 森と湖の天国。「いつでも補給・給水ができる」と思えるほどのブルーベリー摘み放題コース。砂漠系レースとは別次元の癒し
- 沼地の渋滞。Day 1 の冒頭で草に隠れた木道があり、横から抜こうとすると膝上まで沼にハマる。前方スタートが推奨
- 19世紀の郵便道路(Old Postal Road)。歴史を感じる道を歩く特別感
- 休息日のサウナ。本場フィンランドサウナをレース中に堪能できる稀有な大会(ドロップバッグの取り違えが起きないよう注意)
- コロナ禍特有の運営。テントメイト陽性で全員検査を迫られる場面があり、Day 4 で「即リタイア」の崖っぷちを経験
- Mad Reindeer(怒り狂ったトナカイ)。Day 5 のロングマーチで実際にスタッフから警告される
- 小船での川渡り。ボランティアスタッフのサポート付き、ジャングルマラソンのような自力川渡りではない
- Day 5 の深夜1時ゴール。81kmのロングマーチは、CP6 以降の暗闇との戦い
これから挑戦する人へ
- シューズは足首までガードできるものを推奨。Day 1 の沼地渋滞、最終日のジュクジュク沼地など、足元が悪い区間が複数ある
- ドロップバッグ 2 の中身は最終日のお楽しみではなく、休息日のサウナ・湖水浴用。水着・タオルを忘れずに
- 朝晩の冷え込みに備える。8月開催でも寒い。寝袋は夏季向けでもダウン入りを推奨
- ブルーベリー摘み放題は本当。行動食を減らして、現地のベリー類で補給する作戦も可
- トップ集団でもコースを外す可能性。CP の通過確認はしっかり、コースマーキングは見落とさないように
- コロナ禍の運営は流動的。同テントの選手と症状を気にする時期は、自分でも簡易検査キットを準備する選手が多かった
- ホイッスルは必須装備だが、Mad Reindeer 用ではない(多分)。野生動物対策の心構えは持っておく
森・湖・沼地・19世紀の郵便道路・トナカイの大地、そしてサウナ——砂漠系ステージレース漬けの身体に染み入る、緑と水のラップランドだった。