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完走志向

2026年サハラマラソン参加記録

@sora-shimizu2026-04-18モロッコ · Apr 7d

MDS Legendary 40周年の記念大会。距離は過去最長の270km、参加者は1,500人超の史上最大規模。砂嵐や雨にも見舞われたなか、総合193位(38時間36分21秒)で完走。

MDS Legendary 40周年の記念大会。総距離は過去最長の270km、ロングステージは制限時間40時間・距離はなんと100km、参加者は1,500人を超える史上最大規模の砂漠レースとなった。比較的気温は低めだったものの、砂嵐や雨など様々な天候に見舞われた1週間。

結果は 総合193位/男子171位、タイム 38時間36分21秒。MDSへのエントリーをきっかけにランニングを本格的に始めた初心者ランナーとして、コースの8割以上を「走り続けて」フィニッシュした記録です。

練習・準備

サハラマラソンへのエントリーをきっかけに本格的な練習を開始。基礎的な体力だけではなく、荷物を背負いながら砂漠でも走れるだけの脚力をつけることを目的にトレーニングを実施。

  • 期間:2025年6月〜2026年3月(約10ヶ月)
  • 週あたりの距離:30km〜50km(平日5kmのランニングと週末のロングジョグがメイン)
  • 主な練習内容:家の周りのロードランニング、登山、トレイルランニング
  • 予行練習:砂浜40km、10kgを背負っての70kmラン、100kmのウルトラマラソンなどを実施
  • 現地特有の準備:砂浜練習、荷物を背負っての長距離ランニング

装備

選定基準は「とにかく軽くてすぐ乾く」「普段の練習から使い慣れている」こと。

  • バックパック:WAA 公式ザック
  • シューズ:Topo Athletic MTN RACER 4
  • ゲイター:WAA 公式ゲイター
  • 靴下:ドライマックス
  • Tシャツ:MILLET インテンスTシャツ
  • パンツ:Patagonia ストライダープロショーツ
  • 防寒着:mont-bell プラズマ1000
  • インナー:finetrack ドライシャツ/ドライパンツ
  • 寝袋:NANGA ミニマリズム180(マットはなし)
  • その他の神アイテム手ぬぐい。汗を拭ける/日除になる/すぐ乾く/軽い、つまり最強。

食事・補給

1日 2,700kcal を目標に、完全栄養食やアルファ化米をベースに構築。3日目以降は朝ごはんを見るだけで吐き気を催すようになり、一点を見つめて飲み込むことに神経を集中させた。ご飯のバリエーションは多い方がいい。

  • :シリアル × 完全栄養食(粉末)
  • :アルファ化米 × フリーズドライ食品(牛丼、中華丼など)
  • :インスタント麺(焼きそば、塩ラーメン、辛ラーメンなど)
  • 行動食:メダリスト/俺は摂取す などのジェル、エネもち、スポーツ羊羹、干し梅(ロングステージではカフェイン系のジェルも併用)
  • ドリンク:ポカリスウェット × パラチノースのミックスドリンク
  • 嗜好品:ピザポテト、ビーフジャーキー、柿ピー、ドライフルーツ

レースレポート

Day 1 — 35km「砂漠の洗礼」

スタート前のブリーフィングではフィリピンのロックスターが『Highway to Hell』を熱唱。緊張と興奮でふわふわした感覚でスタートを切った。

1,500人超が一斉に駆け出し、その波に乗るかたちで走り出したが、波に乗りすぎて完全なオーバーペース。最終CP後の柔らかい砂丘に足が動かず一気に失速し、両足を攣りそうになりながらなんとかゴール。景色を楽しむ余裕もなく1日目は終了。ご飯はまだ美味しく食べられている。

Day 2 — 40.5km「自分のリズムを大切に」

前日の反省を活かし、自分の心地よいリズムを守ること/心拍を上げすぎないこと を徹底。砂丘では歩き、フラットで硬い地形では確実に走る、というメリハリが自分にとっては圧倒的に正解だった。

脚のダメージは想像より少なく、徐々に砂漠のランニングリズムを掴み始めた。コンディションは初日より良くなり、ご飯もまだ美味しい。

Day 3 — 29.1km「砂を捉えて走れるように」

突如として朝食を受け付けなくなった。見るだけで気持ち悪い。それでも栄養はなんとしてでも摂取せねばと心を鬼にして、異次元の集中力で浮き上がってくるシリアルたちを抑え込みながら口に運ぶ。

3日目は距離も短く、荷物も軽くなってくるタイミング。2日間を通して 「砂に沈み込まない走り方」 を徐々に習得し、ほとんど歩かずに走り切れた。「このレース結構いけるかも」と調子に乗り始めた日(※実際にはこの後ボロボロになる)。足には徐々にマメができ始め、安全ピンをライターの火で炙ってセルフ治療。潰してもすぐに復活するマメと、無心で向き合った。

Day 4 — 100km「魔の長距離ステージ、そして人生最高のレモン」

40周年記念で MDS史上最長に拡張された100kmロングステージ。砂丘、ガレ場、岩場を抜けて、沈まない夕陽を背にひたすら走り続ける。自分と向き合う絶好の機会と思っていたが、何ひとつ考える余裕はなく、ただ足を前に出し続けるだけ。

コース途中で 冷たいレモン を配るスタンドを発見。最初は怪しい私設エイドかと疑ったが、公式スタッフがいたので一ついただく。口に入れた瞬間、酸味と冷気が頭の芯まで突き抜ける。人生で食べたレモンで間違いなく一番美味しかった。

夜は月明かりに照らされた砂漠を進む。残り10kmで足が動かなくなる。まともに食事をしていなかったのでエネルギー切れ。ここで師匠から教わった切り札 アップルティー を投入。一口含んだ瞬間、甘さが体に染み渡る。たかが粉末紅茶、されど粉末紅茶。

スタートから15時間後、夜8時。漆黒の砂漠に浮かぶキャンプの光に迎えられゴール。興奮と疲労で脳がおかしくなり、先にゴールしていたテントメイトにマシンガントークを浴びせて眠りについた。

Day 5 — 0km「休息日、と思いきや砂嵐」

ロングステージを早めに終えた組は、翌日が休息日。「ゆっくり横になるぞ!」と意気込んだのも束の間、昼から夕方にかけて 砂嵐 が襲来。テント内も装備も体もすべて砂まみれに。トイレに駆け込んでも砂が降り注いでくる。

それでも、こんな砂嵐の中で走り続けているテントメイトや他の参加者のことを思うと、ちっぽけな泣き言は言っていられない。やがてテントメイト全員がゴール。みんなの一皮剥けたいい表情を見て、なんだかジーンとくる。砂まみれになったテント内を協力して片付ける、それだけのことで、チームとしての結束が強まった気がして嬉しかった。

Day 6 — 42.2km「覚醒のマラソンステージ、そして果物の感動再び」

朝目覚めて確信する。今日はすごく走れそう。 休息日を経た身体は驚くほど軽かった。暗がりの中スタートし、快調に走り続ける。BIG DUNE を越えて、地平線まで続く広大な砂漠が視界全体に広がる瞬間、

「あぁ、こんなにも贅沢な体験ができているんだな」

と、休みをカバーしてくれた会社の人、こんな体験を作ってくれた主催者、応援してくれる友人、すべてに感謝の気持ちが湧いてきた。生まれて初めて「走るって、こんなに楽しいんだな」 と感じられた瞬間でもあった。終わってほしくないなと寂しい気持ちすら覚えながら、42kmを止まることなく走り抜けた。

ゴール後の夜に配られた オレンジとバナナ。冷えたフレッシュフルーツがこれほど美味しいものなのか。何から何まで贅沢な1日だった。

Day 7 — 23.2km「一筋縄では終わらせない、それがサハラマラソン」

最終日23km。これまでの距離に比べたら大したことないと高を括っていた。「最後まで気持ちよく走り切ろう」と心に決めてスタート。

スタート直後、周囲の猛烈なダッシュに飲まれる。最終日特有のテンションでみんなとんでもなく速い。自分のリズムを忘れ、つい合わせてしまった。そして 3km地点、ふくらはぎに衝撃。肉離れ。最終日、まさかの肉離れ。

気休め程度の痛み止めを流し込み、片足を引きずって一歩ずつゴールへ向かった。ここまで6日間の楽しさが嘘のように、本当に辛い20km。それでもついに迎えた最終ゴール。思うように走れなかった悔しさと、チームJapanの仲間が出迎えてくれた感動と、完走した安堵。いろんな感情が同時にこみ上げて、思わず涙が出そうになった。やはりサハラは最高であった。

番外編 — サハラからホテルへ

サハラからバスに揺られること6時間、ワルザザートのホテルに到着。一目散に向かったのはシャワー。これが至高。今まで入ったどんなお風呂よりも気持ちよく、15分で4回はシャンプーをしたんじゃないかというくらい、ひたすら砂を洗い流した。

振り返り

ゴールで完走メダルを首にかけられた瞬間、感じたのは達成感より 感謝の気持ち だった。応援してくれた友人、テントメイト、会社の皆さん、そしてレモンとオレンジとバナナとポテチに、ありがとう。

これからMDSに挑戦する方へ、転んで覚えた教訓を2つだけ。

1. ペースは「気持ちよく走れる速度」を絶対に守る

時間を気にしない。心拍を上げない。周りが前半に飛ばしても絶対に乗らない。私の肉離れは、最終日に周囲のペースに合わせた結果だった。「ゆっくりでも走り続けられる」が最強の戦略。

2. 食料は「飽きない工夫」を最優先に

完全栄養食やアルファ化米だけだと確実に限界が来る。食事の味変はマスト。心の支えになる嗜好品も忘れずに。そして「好きなもの」ではなく、「食欲がなくなった時でも食べられそうなもの」 を想定して献立を組むこと。


結びに

生きることを全力で感じた7日間。林間学校と修学旅行と運動会と学園祭を一つにしたような、きつくて、楽しくて、心が熱くなる体験だった。あれだけ過酷だったのに、不思議ともう一度走りたくなる。これが俗に言う サハラ症候群 である。

またいつか、日々の喧騒に飲まれてしまいそうになったときに、訪れたいと思う。待ってろサハラ。

About the contributor
@sora-shimizu

清水 そら

サハラを完走したマラソン初心者。MDSへのエントリーをきっかけにランニングを本格開始。 レース本番はコースの8割以上を走り続け、世界TOP200で無事に完走。

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