出典:本レポートは note.com の Rena 氏(@rena_fr)執筆のマガジン「Southern Lakes Ultra 2025」を、著者の許諾を得て転記しています。再利用時は必ず原典 URL と著者名を併記してください。
練習・準備
Southern Lakes Ultra って?

レーシング・ザ・プラネット主催のレースで一緒だった仲間が、2024年2月に開催された Southern Lakes Ultra に出場し、「とっても良かった」と、なぜか私にレース主催者を紹介してくれた。
「アジアから、日本からたくさん来てほしいから、是非に宣伝してほしい」とのことなので、Facebook に投稿して軽く反応を見てみたら、想像以上の反応。ならばと、レース概要を日本語で書き起こして note 記事執筆に至り、レース勧誘活動を開始。最終的に 日本人選手10名 が集まることになる。
開催地は クイーンズタウン。ニュージーランド南島のアクティビティの宝庫だと言われている街で、オークランドで国内線乗り換えるか、オーストラリア経由であればシドニーやメルボルンからもアクセス可能。
主催者・公式情報
- 主催: Southern Lakes Events
- 公式: Southern Lakes Ultra
- 開催地:クイーンズタウン(Central Otago)、ニュージーランド
レース概要
- 6 ステージ / 7 日間、総距離 250km
- 1ステージあたりの距離は20km〜70km
- 獲得標高 6,000m以上
- 競技形式:Supported / Unsupported を選択可能(レース前・レース中でも変更可)
- いくつかのステージに ショートコース設定 あり(タイム次第では強制的にショートコース振り分け)
スケジュール
- 2025年2月21日(金) - レース受付、装備チェック、レース説明
- 2025年2月22日(土) - キャンプ地へ移動、ウェルカムディナー
- 2025年2月23日(日) - ステージ 1
- 2025年2月24日(月) - ステージ 2
- 2025年2月25日(火) - ステージ 3
- 2025年2月26日(水) - ステージ 4(ロングステージ)
- 2025年2月27日(木) - 休息日
- 2025年2月28日(金) - ステージ 5
- 2025年3月 1日(土) - ステージ 6、表彰式&ディナー
※レース前後、2/21 と 3/1 の宿泊は出場者自身で手配。
エントリー代
3,500 NZドル(最初の30名は早割で 3,200 NZドル)クレジットカード2回払い。
- エントリー時に 1,000 NZドル 支払い(いかなる場合も返金不可)
- 残金は 2024年7月1日 までに請求・支払い
ディスカウントコード制度 あり:エントリー画面の「How did you hear about Southern Lakes Ultra」欄に紹介コード SLURENA を入力し、5人以上が使ってエントリーすると、2回目の請求が 2,000 NZドル に。つまり500 NZドルの割引。最終的に5人集まったので割引適用。
エントリー代に含まれるもの
- フィニッシャーメダル
- 入賞トロフィー(Supported / Unsupported × 男女別 1〜3位)
- ゼッケン、レースパッチ、レースマニュアル
- Capra アプリ(スマホにコース GPX をダウンロード)
- レース記念品
- スタッフ・メディカルによるサポート
- レース前後の移動(バス)
- 歓迎イベント・食事、表彰式・食事
- 最終日のフィニッシュラインでの軽食
- チェックポイント:冷たい水、日焼け止め、電解質
- キャンプ地:冷たい水、お湯、テント
- 写真(ダウンロードリンク提供)
装備
Racing The Planet 系の自給自足レースに比べると、Supported カテゴリーであれば装備の総量はかなり抑えられる。
出場カテゴリーの「直前変更」
エントリー時は Unsupported(全荷物を背負う)でエントリーしていたのだが、レース直前にニュージーランドのホテルで水なしで約7kgを背負ってみたら、左肩が五十肩をこじらしてしまっているせいで、着脱する時に激痛。水を加えると約9kg。無理はしないでおこう、と主催者に連絡して Supported カテゴリーに変更。
サムスの勤務先(クイーンズタウン中心部の大型ショッピングセンター)に、お手頃価格のアウトドアショップがあり、運搬用 ダッフルバッグを NZ$80 でゲット。ノースフェースだったら倍以上していたわ。
ニュージーランド税関対応
ニュージーランドは 食料品・植物・土の持ち込みが厳しく、入国カードでの事前申告が必須。罰金 NZ$400、もしくは入国拒否のリスクがある。
- カルパスなどの肉類は 現地調達 予定で持参しない
- ジップロックへの移し替えは行わず、パッケージそのままで持参(食料リストとの照合を容易にするため)
- トレッキングポール、シューズ も申告対象。新品シューズを持参、トレッキングポールはちゃんと洗って清潔な状態を強調
入国カウンターで「Oh, I love Tonkotsu Ramen!」と感嘆の声を上げられた瞬間、「は?なんで豚骨分かるの?わざと豚と分からないように Tonkotsu って書いたのに!」と心の中で叫んだが、結果的に 食料没収はゼロ で通過。
食事・補給
- Supported カテゴリーなので、7日分の食料は預けバッグに(カップ麺・レトルト・缶詰も可、ジップロック詰め替え不要)
- キャンプ地で晩御飯 は大会側が用意(湖畔テントでお野菜・お肉・デザートの 予想を遥かに超える豪華ディナー)
- レース中の補給:CP で冷たい水、日焼け止め、電解質を提供
- Day 2 の CP3 で ポテトチップス配給、ゴール後に 缶コーラ、その他ご褒美がちょくちょく出てくる
レースレポート
Day 0:クイーンズタウン到着 — 2025.2.19〜2.22
クイーンズタウン到着 (2025.2.19)
山と湖に囲まれた大自然豊かなニュージーランド、レースの舞台はアウトドアアクティビティが豊富で有名な街 クイーンズタウン だ。
9時半シドニー発のカンタス航空でクイーンズタウン到着。山の合間をくぐり抜けるような空港へのアプローチが クスコ、ブータンのそれを彷彿 させる。シドニーから更に時計の針が2時間進んで14時半の到着。日本との時差は +4時間。

入国審査の自動化ゲートを抜けたら有人カウンターで赤札を渡され、「荷物を受け取ったら、赤い線に従って進んで行ってね。そこで荷物を開けてチェックするから」と告げられた。あー、終わったー。俺様の豚骨ラーメンとか、カレーめしとか没収されてしまうんだわ……
幸い、食料リストを見せ、肉類は現地調達予定だと伝えると、現物の食料は上っ面をチラッとみた程度で、没収されることなく無事に入国完了。日本人選手団で到着一番乗りだ。
この日は空港から2kmほど離れたホテルに滞在し、近くのスーパーマーケットで追加の食料、ビーフジャーキーを調達して荷物の整理。
サムスとの再会 (2025.2.20)
朝から、2023年のモンゴルでのレース(Gobi March)で一緒だったクイーンズタウン在住の砂漠仲間、サムス と、彼の勤務先のすぐそばのカフェでお茶。このレースの参加が決まってから、彼との再会をすごく楽しみにしていた。

親切にも、この辺の湖畔には蚊やサンドフライがめちゃくちゃいる からと、虫除けのスプレーをくれたり、バスカードを貸してくれた。
そして、昨晩、私はある決断をしていた。レースの出場カテゴリーを「Unsupported」から「Supported」への変更 だ。五十肩の影響で着脱に激痛が走るのだ。サムスの働いている場所のショッピングセンター内で運搬用ダッフルバッグを NZ$80 でゲット。
14時にホテルをチェックアウトし、Uber でクイーンズタウン中心部に向かって、他の日本人選手(1人除く)と無事に合流。
ギアチェック (2025.2.21)
朝、少し喉に違和感を感じながら起床。昨晩はズンドコズンドコとクラブさながらの重低音にかなり悩まされながらも何とか少しは眠れていたようだ。レース前にゲストハウスのドミトリー宿泊っていうのはもう絶対やらないと心に決めた。
午前中はブランチも兼ねて、みんなでクイーンズタウンの街をぶらぶら。13時ごろにギアチェックで、大会本部があるホテルへ向かう。

ギアチェックは、誓約書などの書類記入から始まり、レース必須装備のチェック、レース中に運んでもらう荷物を預け、レース前の記念撮影を行うという一連の流れ。特に問題なくスムーズに進んだ。Racing The Planet のレースで一緒だった懐かしい面々と 再会 を果たす。
17時からのレース前のブリーフィングで再び集合。この辺りから何となく喉の痛みが増し、倦怠感が出始め、日本人選手みんなで食事を取りやめるか悩み始める。が、私が抜けてしまうと面倒臭いことになりそうな気がしたので行くことにした。
ここで日本人選手10人全員揃って晩御飯。お医者さんでもある N氏からお薬をいただき、ひたすら寝た。
キャンプ地移動 (2025.2.22)
朝10時に集合し、2台のスクールバスに分かれてキャンプ地に向かう。N氏のお薬が効いたのか、喉の痛みや倦怠感はかなり改善されていた。これなら行ける!
途中、ワナカの街でお昼休憩。何気なく入ったフィッシュ&チップスのお店が大当たり。今までイギリス、オーストラリア、カナダ、もちろん日本と食べてきた中で Top3 に入る んではなかろうかというくらいの私好みの味。
そして、初日のキャンプ地に到着。

テントメイトは日本人3名、ニュージーランド人、オーストラリア人の計5名。そのうちのオーストラリア人のロウは、2023年のゴビマーチで一緒だった らしく、私のことを覚えていた。「コースから外れていることを教えてあげたんだけど?」と言われた。ごめんなさい、全然覚えてない……。
晩御飯は湖畔のテントの中で、お野菜にお肉やデザート、予想を遥かに超える豪華ディナー だった。
Day 1:Timaru Creek - Hawea — 42.6km / 獲得標高1,000m / スタート 8:00
南半球のニュージーランドは夏なのだが、思ったより暑くなく、朝の冷え込みもなかなか。ダウンジャケットが手放せない。
本日の距離は42kmといきなりフルマラソンの距離。そして、今日はショートコース(14km)の設定もある。
日本人女性2人のペーサーに
8時スタート。何だかゆるっとレースが始まった。みんな一斉に走り出すもんだから釣られて思わず小走りになる。すると次第に暑くなってしまい、一旦立ち止まってダウンジャケットを脱ぐ間に 最後尾近くまで下がってしまった。
再び早歩きに切り替える。すると、前方にステージレース初参戦の日本人選手女性 2 名が見えてきた。
- イロキ娘氏:砂漠仲間、悪友イロキ君の娘さん。親子でステージレース参戦 って、ステージレーサーの夢でもあるよねえ
- まんまる夫人:胸元に必ず長崎県五島市のご当地キャラ「つばきねこ」の人形をぶら下げているまんまるさんの奥さん。ステージレースに興味津々だった彼女をこのレースに誘ったのは私
そのイロキ君は「初日は娘と一緒に歩く」と言っていたのだが、「Unsupportedカテゴリの出場者は少ないし、ワンチャン、上位入賞もあるのでは?」と散々イロキ君に走れと煽ってしまった身としては……。
これは責任持って2人のゴールを見守るしかない。「一緒に歩いてもいいですかー?」と彼女らの旅路に加わった。
折り返しコースと湖のエメラルドグリーン
本日のコースは湖沿いの林道を14km地点のCP1で折り返して、スタート地点まで戻って行き、さらに湖に沿って行くというもの。
折り返しのCP1までダラダラ歩いていると、次第にCP1を通過したランナーたちが続々とやってくる。その中で、Unsupportedカテゴリーで一番最初にやってきたのがイロキ君 だった。これにはびっくり。
CP1ではスニーカーのコスチュームを着たボランティアさんが声援を送っていた。
来た道を戻る。日が高くなったためか、太陽の光が湖に反射し、湖の水の色がバスクリンを入れたかのような美しいエメラルドグリーン ではないか。四万十川の清流を思い出す。

ワラビーの看板、まんまる夫人の悲報
28km地点のCP2はスタート地点の近くにあった。給水中、ふと草むらに隠れるように置いてある看板に目をやると、「ワラビーを見つけたら報告すること」と書いてあるではないか。え?ワラビー?テンションが上がる。
コース脇にレッドフラグが現れ、湖畔のビーチに到着。34km地点のCP3を抜けると、レッドフラグのマーキングに従ってトレイル、舗装された道路脇を歩いていく。
が、いきなりレッドフラグを見失う。前方を歩いている親子がなぜあそこを歩いているんだろうと周辺を見渡すと、あった。分岐点で見落とし、僅かにコースを外れてしまっていた。良かったー、前方に誰かいなかったら、このまま完全にコース外れてたわ。
まんまる夫人に 悲劇。胸元にぶら下げていた コリラックマのぬいぐるみをいつの間にか無くしていた という。いきなり「悲報です。」って報告してくるから、イロキ娘氏と2人、何?体調不良?リタイアしたいの?ってもっと悪い方に考えた。
トレイルで犬の散歩をしていたご婦人に「カレンって知ってる?」といきなり聞かれる。は?なんでジモティーが私のレース仲間のこと知ってんの?ほんと意味わかんない。
最後のチェックポイント、CP4は 40.5km 地点。ゴール 2km 手前にチェックポイントを置く意味とは?
制限時間9時間の本日のコースをギリギリまで楽しみましたとさ。
Day 2:Hawea to Albert Town — 39km / 獲得標高310m / スタート 7:00(ウェーブ)
本日はウェーブスタートで、ショートコースはなし。前日のタイムから第1ウェーブの 7時 スタート。そして、本日予定していたキャンプ地が使えないということで、今日もこのキャンプ地に戻ってくる という話が前日のブリーフィングであった。
この時ほど、Supportedカテゴリーに変更しておいて良かったわ〜と思ったことはない。だって、寝袋などの荷物はそのままテントに置いて行っていいんだもん。
全荷物を背負わないステージレースって体への負担がこんなに楽だとは思ってみなかった。この世界を味わってしまうと、元の世界に戻れなくなっちゃうんじゃないか?
ブラピ in クイーンズタウン
ゆるっと7時(ちょい過ぎ)にスタート。今日も何となくまんまる夫人とイロキ娘氏と3人の旅路となる。Hawea River の透明度たるや、清流すぎて生物が住めないんじゃないか って思うくらいだ。
6km地点のCP1まではほぼほぼ平坦であっという間。CP1を過ぎたあたりからは、8時スタート組がやってきては追い越していく。
ふと、川を挟んだ向こう側の農家のような邸宅の敷地に停まっている ヘリコプターのプロペラがブンブン回り始め、今にも飛び立とうとしている。「あれにブラピが乗ってたりしてw」と盛り上がる。ちょうど今、クイーンズタウンに ブラッド・ピットが映画の撮影に来ていてしばらく滞在する というニュースを、サムスに教えてもらっていたのだ。
レースでボロボロのコンディションでお会いしたくないわー、なんてどうでも良い話で盛り上がる。タイムを競うレース感は全くなし。
ユーサンと「APT.」ダンス
11km地点のCP2でユーサンに遭遇。2022年ナミブ砂漠の初日で抜きつ抜かれつと争った相手、韓国人選手だ。3年振りの再会だがインスタをフォローしているので、彼の動向は知っている。久しぶりっていう感じがしない。彼はヒップホップダンスをやっている。

「ねえ、ねえ、やってやって」と無茶振り。「アーパツ、アパツ♪」(ROSÉ & Bruno Mars - APT.)とか歌いながら踊り始めたので、私も頑張って動きを真似てみる。
その様子を見ていた レースディレクターのケリーン が「ちょっと!もう一回それやって!」とお代わりを要求。ユーサンと踊っている様子が撮影され、後に 公式インスタのストーリーズにアップ された。
CP3で車移動、ポテトチップス配給
CP2を過ぎてからは Clutha River を右手にして、歩幅を合わせにくいちょっと狭いシングルトラックをひたすら進む軽い地獄。
23km地点のCP3には3人揃って到着。ここで一旦計測をやめ、車で Clutha River の対岸へ向かう。レースの途中で車移動って初めての経験だわ。橋は車しか通れないらしい。CP3ではなんと ポテトチップスの配給。贅沢の極み。
対岸に渡りトレイルの入り口で降ろされ、レース再開。サハラ仲間のイガちゃんも追いついてきて、ここからは付かず離れずの距離感での4人旅。
暑さとの戦い、トムソーヤ風イケメン男性陣
残り 7-8km ってところで、あともう少しで終わるってところなのに、これがまた地味に辛かった。暑さのせい。あと少しっていうのが延々に続いているような気さえしてくる。
最後の最後で、あなた方はトムソーヤですか?って感じで川遊びをしている男性陣 を発見し、そのイケメンぶり、良い感じでついている筋肉、体格の良さに テンション爆上がりする女性陣3名。最後の最後でいいもん見た。元気出た。
ついにゴール。ゴールでは 缶コーラのご褒美。なんだかステージレースの過酷感があんまりない気がするのは気のせいだろうか?
Day 3:Albert Town to Glendhu Bay — 28km / 獲得標高310m / スタート 7:45(ウェーブ)
本日もウェーブスタートでショートコースの設定はなし。前日のゴール地点までバスで向かい、そこから3日目のレースがスタート。1台しかないバスは2回に分けてピストン輸送。
ウェンディとの再会、ペースアップ
先発組は7時45分頃にスタート。さて、今日はどうしようか。スタートしてからしばらく アメリカ人選手、ウェンディ と話す。彼女は初日に「レーシング・ザ・プラネットのラップランドに出ていなかった?」と話しかけてきた人物。申し訳ない、ウェンディのことはそういえばいたようなって感じの記憶しかない(レースレポートの3日目に写真は使っていたんだけど……)。
今日はここから自分のペースでレースをすることに決めた。元々頼まれたわけでもないし、距離も短いし、コースも迷いようがないし、難易度もそんな高くないし
と、なぜか心の中で言い訳しながら、早歩きのペースを徐々に上げていく。先発組でスタートした人たちを次々に捉えて追い越していく。

ワナカの街、フィッシュ&チップスのお店
10km地点のCP1をサクッと通過。CP2が4km先だからね。今日は短いコースながらも CPの間隔が歪すぎる。そもそも車両がアクセスできるところにしかCPを置かないかららしい。
今日はほとんど街中のトレイルコースなのだがふと気がついた。あれ?ここって初日のキャンプへ移動するときに途中休憩したワナカの街じゃね? ということは、あのフィッシュ&チップスの店も……レース中は外部からのサポートは一切禁止。残念。
そして、前方を歩く ドリーン の姿を捉えた。彼女はレーシング・ザ・プラネットのナミブレース、南極で一緒だったアメリカ人選手だ。先月はボルドーで、そしてこのレースが始まる前は日本で会っている。気がついたら、世界のどこかにいるスーパーアクティブなお方。そして、去年もこのレースに出場していて、日本のアンバサダーに私を推薦してくれたのが彼女。
14km地点のCP2で彼女と一緒になり、記念撮影。「あれ?今日は1人なの?」とボランティアスタッフに聞かれる。実はこれ3回目。
ヘッジホッグ、土砂降りゴール
ここからパラパラと雨が降り始める。と同時に、湖の際のアップダウンのある 崖っぷちのトレイル をひたすら行く軽い苦行が始まる。天気が良かったら絶景に間違いない。

後ろから私を呼ぶ声がする。テントメイトのロウだ。「ヘッジホッグがスタックしている!」と言うではないか。「は?ヘッジホッグって何?」「ヘッジホッグはヘッジホッグよ!」
Hedgehog = ハリネズミ お勉強させて頂きました。
だんだん雨足がひどくなり 土砂降り に。レインジャケットを出すかどうか悩みながらもずるずるとレースを続けている。もうここまで濡れてしまったら、レインジャケット出しても意味ないよなあなんて考えたのが運の尽きである。
そして、土砂降りの中ゴール。ゴール直前に後方にドリーンが追いついてきているのが見えたので、彼女の到着を待って一緒にゴールした。
キャンプ地の天国・コインランドリー
なんと、本日のキャンプ地は シャワーの他に、コインランドリーもついている と言うではないか。びしょびしょになったレースウェアを洗濯して乾かせるってこと?
すげえ、マジで天国じゃね?いいの?こんな贅沢? 3年前のあのジャングルでの出来事はなんだったんだろうか。
Day 4:Coronet Loop(Short Course) — 13km / 獲得標高742m / スタート 10:00
朝から体調がよろしくない。昨日、雨に打たれ続けていたせいで、どうやら風邪の症状がぶり返してきたようだ。
前日のブリーフィングでは、当初予定になかったショートコースを急遽設けたという話があった。それはいいとしても、選択の余地もなくショートコースに回されたのが納得いかない。そのせいか、気分もすぐれない。
本来のコースは 38km、獲得標高 2,500m、制限時間 11 時間。ルーマニアや台湾のレース並みにきついけど、荷物を背負わなくていい分、自分としてはなんとか行けると思っていた。
いろんな考え方があるし、他人から見ればどうでもいいこだわりなのは分かっているが、自分にとって「完走」とは、与えられたコースをすべて踏破することである。選択の余地なくショートコースに回されたのは、正直、かなりの精神的ダメージだった。
上り坂で呼吸が乱れる
朝からスタート地点までバス2台に分かれてバス移動だ。このレース、やたらと車での移動が多いな(笑)。スタート地点のアロータウンに着き、通常コース組のスタートを見送る。羨望の眼差し を向ける。
ショートコースの距離は 13km、獲得標高は 700m くらい。コース前半はひたすら下り、後半はひたすら上る。
ならば、さっさと今日のレースは終わらせてしまおう。前半の下りは走ることにした。
10時ごろにゆるっとスタート。レーシング・ザ・プラネットのゴビマーチ、ヨルダンで一緒だったアメリカ人の クリスティーナ が飛び出し、イガちゃんと私がついていく。Unsupportedカテゴリで全荷物を背負っているのにクリスティーナがなかなかのペースで飛ばしていく。
この下り、永遠に続くんじゃないかと思うほど地味に長い。ようやく下りきったところでCP1に到着。なぜかそこに MUSASHI のスポーツドリンクが置いてあり、500ml を一気飲み。
ここからは、ひたすら上り。過去最大の体重が重しとなり、さらに風邪のせいで呼吸も乱れて大苦戦。先行するクリスティーナやイガちゃんの姿はどんどん小さくなり、ついには見えなくなった。
あまりに上れない自分にショックを受ける。今までもレースやイベントで「上れない、上れない」と嘆いてきたけれど、今回はそれどころじゃないレベルでショック だった。
CP2ではイガちゃんが私の到着を待っていた。ここから先は舗装された道路脇を行くことになる。
車が1台止まり、「あのー?日本の方ですか?」と日本語で声をかけられた。まさかの現地在住か旅行者かは知らんが、日本人に遭遇するとは!「はい、そうです。」と返すと、なんだか大変そうですねえーって感じの視線を向けられた。
ゴール近くでまんまる夫人も追いついてきて、3人でゴール。
ロッジ泊、そしてリタイア決断
この日はテント泊ではなく、ロッジ泊。もちろんシャワーも浴びられるし、今晩はベッドで眠れる。快適なリビングルームに、調理道具のそろったキッチンまである。なんだか贅沢じゃない?

とはいえ、ショートコースとはいえ、レースが終わって気が抜けたのか、どっと疲れが押し寄せ、全身を倦怠感が包む。喉もまた痛み始めている。本格的に風邪の症状がぶり返してきた。
頭の中でいろいろと思案を巡らせた末、ひとつの結論にたどり着いた。
「ここでレースを終わらせる」
ショートコースに回された時点で、私の中での「完走」はすでに失われている。しかも、この体調のまま翌日のロングコース(おそらくまたショートコースになるだろう)に出たら、症状が悪化するのは間違いない。そう考えたとき、ここで一度区切りをつけ、体調の回復に専念するのが最善の策 だと思えた。
主催者にレース離脱の意思を伝えた。
ロッジの部屋に戻り、帰り支度を始めた。既にレースを終えて寛いでいた部屋の人たちにレース離脱の旨を伝えると残念がってくれた。
「あなた、2022年のアタカマに出てたよね?あの時、あなた(早歩きが)クソ速くて全然追いつけなかったんだけど?」とショートヘアのツーブロック姉さん(名前を失念)に言われる。え?え?ちょ、あなたも前に一緒のレースに出てたんですかい?
ボランティアスタッフの車でクイーンズタウンの街へ戻った。
Day 5〜6:DNF 後の数日 — クイーンズタウン滞在
宿泊先のドタバタ
クイーンズタウンまで車で送ってもらったのはいいものの、レース中の荷物を預けているホテルは、この日に限って満室で宿泊できない。さらに、レース後に泊まる予定で予約していた空港近くの Holiday Inn も、この日は満室で泊まれない。完全に失敗した。翌朝にレース離脱すれば良かった。
しかも今は観光シーズン真っ只中のクイーンズタウン。どこのホテルもバカ高い。Hotels.com でなんとか1晩の宿を予約。重たい荷物を背負っての移動は、本当に体力を削られた。
翌日以降は、空港近くの Holiday Inn に帰国する日まで滞在することにした。こうなりゃ IHG ホテル修行だ(ヤケクソ)。
レース最終日:湖畔で定点観測
レース最終日。さて、どうしようか。まだ咳は出るし、喉も痛い。でも、2日間たっぷり寝たおかげでかなり回復してきた。コースマップを見てみると、ホテルの近くを通ることがわかった。
とりあえず、ゆっくり歩いてホテル近くのコースまで行ってみる。すぐ近くにCP3があるので、そこで大会ボランティアスタッフと選手が来るのを待つ、という選択肢もあった。でも、それはやめた。
自分の性格上、誰かがそばにいるとどうしても気を遣ってしまう。その場を盛り上げようとして、無理にでもスイッチをONにしなければならない。正直なところ、今はできるだけ体力を回復させたいので、スイッチはOFFのままでいたいのだ。(陽キャのように見られがちだが、思いっきり陰キャ)

湖畔の芝生の上に座り、ずっと定点観測。選手が通る度に拍手を送る。中には私に気づいて、心配して声をかけてくる人たちもいる。「体調は大丈夫?」「次どこかのレースで会えるよね?」「表彰式には来るよね?」など、ありがたい限り。
ナミブレースで一緒だったユーサンも風邪をひいたようで、韓国人選手たちに「2人揃って風邪ひいているから何か怪しいって話になっているんだよ。」と軽くいじられたので「あー、それは言えないな。」と返しておいた。
そして、最後のスイーパーが通り過ぎるのを見守り、私のレースは終わった。表彰式には出ない。
クイーンズタウン観光ベスト3
レースが終わっても、まだまだクイーンズタウンにいる。日本選手団の中で一番早くに到着し、一番最後に去っていく んですわ。
少しずつ回復を確認するかのように、クイーンズタウンの街を歩き回った。クイーンズタウンに行くならここは絶対行くべき場所、ベスト3:
1. Altitude Brewing — レース協賛もしていたクラフトビール醸造所。参加賞でクラフトビール2缶がもらえた。ビアフライトは5種類のビールが楽しめる。

2. Fergburger — 超有名すぎるクイーンズタウンのハンバーガー屋さん。前を通るといつも大行列だが、オペレーションは思ったより早い。朝の8時の開店時間は並ばずに入れるよう。コスパ良し、めちゃくちゃ美味い。ただ、世界一美味しいバーガーなのかは疑問。

3. Mrs Ferg Gelateria — Ferg バーガーの隣にある系列のジェラート屋さん。2種類までだったら味見させてもらえる。ちゃっかり2回行った。

おまけ:Saigon Kingdom Vietnamese Restaurant — 砂漠仲間のサムスがお勧めするベトナム料理店。風邪ひいていたので、フォーの優しい味に癒された。

振り返り
結果
- Stage 4 終了後にリタイア(DNF)
- 完走できず(ステージレース26回目にして初の中途離脱)
このレースの特徴
- Supported / Unsupported カテゴリの選択が可能、しかもレース前・レース中でも変更可。怪我や体調次第の柔軟運用は他のステージレースではほぼ見られない
- ショートコース設定 のあるステージが複数あり、初心者でも完走戦略を組みやすい(ただし強制振り分けの可能性あり)
- キャンプ地のクオリティ が高い。シャワー+コインランドリーのキャンプ、ロッジ泊、湖畔の豪華晩御飯
- コース上のご褒美 が豊富。Day 2 CP3 のポテトチップス、ゴール後の缶コーラ、ロッジのキッチン
- 過酷感は控えめ、ニュージーランドの大自然を満喫する7日間 にチューニングされている
- NZ税関の厳しさ が事前計画を大きく左右する。シューズ・トレッキングポール・食料の事前申告は必須
反省点
レース前からいつもとは違う感じはあった:
- 五十肩のせいで Unsupported を諦め、Supported に直前変更
- ろくに練習もせず、人生最大級の体重 でレースに臨むことになった
- ステージレース26回目ともなると「大丈夫っしょ」みたいな 謎の自信、思い上がり、勘違い があった
- ギアチェック前日のゲストハウス・ドミトリー宿泊が体調を崩した原因のひとつ
- Day 3 の土砂降りでレインジャケットを出さなかった判断ミス
不思議と来年ここにまた戻ってきてリベンジしてやるというような意気込みはなし。ただ、クイーンズタウン(とその周辺)にはいつかまたのんびりトレッキングやキャンプなどで戻ってきそうな気はしている。
これから挑戦する人へ
このレースは、こんなランナーにお勧め:
- 250km/7日間のステージレースに挑戦してみたいが、砂漠のしんどさは避けたい初心者
- Supported / Unsupported を自由に変えられる柔軟性を活かしたい人
- いくつかのステージでショートコースを選びたい人
- キャンプ地の快適度 を重視したい人(シャワー、コインランドリー、ロッジ泊あり)
- ちょくちょくご褒美が出てくる運営を楽しみたい人
完走のハードルを上げたい場合は、Unsupported で全荷物を背負い、ロングコースを行く こと。特にステージ 4・5 のロングコースは山岳ステージで獲得標高が大きく、難易度も高い(と聞いている。私は行っていないので伝聞)。
事前準備のポイント:
- NZ税関対応:食料・植物・土の申告は必須。シューズは新品か完全洗浄、トレッキングポールも清掃のうえ申告
- 湖畔の虫対策:サンドフライ・蚊が多い地域あり。虫除けスプレー必携
- ギアチェック前日の宿泊先選び:ドミトリーやクラブ近辺は避けて、静かな環境で十分な睡眠を
- 5名以上の紹介コード利用 で500 NZドル割引(私の体験では成立した)
ニュージーランドの大自然を堪能する7日間、湖と山と川と森のオールラウンドコースだった。完走には至らなかったが、ステージレース仲間との再会、サムスとのカフェ、フィッシュ&チップス、Fergburger、Altitude Brewing——レース以外の楽しみが多いのもこの大会ならでは。